好きだから ページ50
思えばこの関係性に、疑問を抱いていたのかもしれない。
厄災ガノンと、それを敵として戦うハイラル全土。それは当たり前だと思う。ガノンはこのハイラルを、世界を支配しようと何度も復活していると聞いた。そしてそれを封印するために集められた五英傑と姫巫女が活躍し、ハイラルに平和が訪れる。と、ゲーム中にインパが言っていた。
でもそれでも、このリンチの様な状態にずっと心をモヤモヤさせていた。いや仕方ない。こうしないと、人々は平穏に暮らすことが出来ない。この異物が存在する限り、人々は幸せになれない。
だけど…そうしたら…
『…あなたは…どうしたら存在してもいいんだよ…あなたの存在を…私は無駄にしたくない…』
だからどうか
『ハイラルへの怨みを忘れて、なんて残酷なことは言わない…』
考えてみてほしい
『少しでも自由でいたいと思うなら…』
本能が叫ぶのなら
『私の声に応えて!!私はあなたの存在を縛りたくないんだ!!!!!』
ガノンが雄叫びをあげる。説得できているのだろうか、不安が押し寄せる中訴え続ける。
『ねぇガノン!意思疎通が出来るというのなら!あなたの気持ちが存在するなら!私にあなたを助けさせて!!』
リンク「何を言っているんだ!?そんなことしたらっ…!」
ガノンが再び風を起こし、場は竜巻に囲まれた。Aの髪が靡く。ずっと隣で見てきた彼女を、リンクは見捨てることは出来なかった。
リンク「お願いだA!もうやめてくれ!俺はお前を失いたくない!!俺はお前が…!」
光は押さえる力を強めてリンクを全力で止める。それでもリンクは進もうと、竜巻の中のAをずっと見ていた。
リンク「…っ君が!!好きだから!!!」
『!!』
竜巻の隙間から、Aがリンクを見た。Aの白い頬に伝う輝きは地面へゆっくり落ちる。優しく微笑んだ彼女はそれに応えた。
『…私も好きだよ…リンク』
ガノンに向き直るAは両手を広げた。
『さぁ!私の中に入ってきて!!そこで話をしてほしいんだ!!』
意外にもガノンは素直に私の胸に大剣のついた手を近づけた。凄まじい勢いで、体に怨念が流れ込んでくる。
『うっ…ぐぅっ…ふっ』
リンク「嫌だ!!Aーー!!!!!」
リンクから伸ばされた手を、最後にとることは叶わなかった。
『…ごめんね』
これまでのリンクとの思い出が無駄にならないように
私はやり遂げようと思う。
彼にまた会うためにも。
…
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作者名:粗大ゴミ | 作成日時:2021年9月22日 3時