ずっと待ってた ページ50
Takanori.I
夕飯も美味しく頂いた。
それまでAは、部屋の中にあるお茶を持って、自然を感じてた。
『私熊谷でも、都会の方だったから、あんまり自然の景色慣れてないんだよね』
「そう言えば、そうだよね。
お墓参りした場所も……」
『もっと田舎なところは熊谷でも田舎なんだけどね』
夕飯を食べた後、Aは縁側に座って、ライトアップされた紅葉を見てた。
「ねぇA、折角だからさ降りてみようよ」
『うん』
俺らは下駄を履いて、木のすぐ近くまでやって来た。
Aは薄い羽織りを靡かせて、舞い散る紅葉を見ていた。
『落ち着いて観るの、撮影以来だな〜』
「そうなんだ？」
『うん。
修学旅行が夏だったから、観れなかったんだよね。
秋に行きたかったのに、被るから〜って』
「ってか、修学旅行行けたんだ」
『バカにしてる？』
人付き合いとか、団体行動が苦手って聞いてたから素直に出た感想。
Aは笑ってた。
何やかんや楽しかったんだろうなって思う。
『先生が来いって何度も家に来たから、行ったってだけ。
その時も親は「分かった」ってしか言わなかった』
「……」
『その間におばあちゃんが亡くならなくて良かったって何度も思う』
「二人は俺と付き合ってることに何か言ってた？」
『連絡はした。
返信返って来なかったから、そういう事だと思うよ』
Aは本当に何も思ってない顔で紅葉を見上げてた。
けど、そう言って家族を欲しがってたのは知ってる。
だから、俺は言うって決めた。
「A、」
『ん？』
「俺と、結婚してくれませんか？」
Aは漸くこっちを見てくれた。
その瞳には、涙が浮かんでて。
『何で紅葉見上げてたか分かる？』
「どうして？」
『笑いたかったから。
こうして、涙を流したくなかったから』
ポロポロと、頬に涙を零すA。
俺はAの涙を拭う。
すると彼女は涙を堪えながら笑った。
『剛典』
「ん？」
『私の、家族になってください』
その言葉が嬉しかった。
俺は袖からリングを取り出して、Aの右手を手に取った。
「勿論。
二人で、家族になろう」
『っ』
リングを通すと、Aは涙を堪えて笑顔で頷いてくれた。
そして俺らはライトアップされた紅葉の下でキスをした。
.
.
.
『ずっと待ってた』
「待たせてごめん」
『いーよ』
「A」
『ん？』
「あいしてる」
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年6月22日 19時
