吐き出せるのは ページ47
無事に復活して、暫く経った頃。
いつもとは逆パターンで、彼の方が滅入ってた。
ソファーにボーッと座ってどっかを見つめてた。
ただ、何について考え込んでるのは分かってる。
『たーかのーりくん』
「A……」
私は隣に座って、剛典を抱きしめた。
『吐き出せるのは、どんな形であれ吐き出せばいい』
「っ」
そう伝えると、息を飲むのが分かった。
あとは時間の問題だと思った。
その間、少しでも乗っかってるものが落ちて欲しい。
そう思って背中を撫で続けていると、彼が泣き出すのが分かった。
吐き出せるのは、どんな形であれ吐き出せばいい。
その言葉の通りで、溜まったものを出せばいい。
そうすれば、少しは心が軽くなる。
『大丈夫。
剛典は頑張ってるよ』
「っ……」
彼の頑張りは、ちゃんと分かってる。
台本を持って考えてる姿を何度も見てきた。
彼が表に出さない部分を私は何度も見てきた。
少し泣き続けると、楽になってきたのか鼻をすするだけになった。
『落ち着いた？』
「もうちょっと……」
彼の言葉に、私は嬉しくなって、少しだけ力を込めた。
頼られるのは嬉しく感じる。
「ごめん、こんな姿……」
『なーんで謝んの、良いじゃん』
「けど……」
『剛典だって忙しいのに、あの時の私を支え続けてくれたでしょ？
不安になったら手繋いでくれて、怖くなったら抱きしめてくれて。
涙を流せば拭ってくれて、いつも欲しい言葉をくれた。
それ同じだよ』
私は笑うと、腕を解いておでこを合わせた。
剛典の頬は涙で濡れていて。
『ははっ』
「笑うなよ」
『いーじゃんいーじゃん』
私も溢れてくる涙を堪えて、笑った。
『剛典、辛くなったら辛いって、言葉にしていいんだよ。
我慢しなくていいって言ったのは、剛典だよ』
「ん……」
『剛典、いつだって、頼ってくれていいんだよ。
私が剛典だけのように、剛典の唯一に私はなりたい』
声が震える。
泣かないつもりだったのに。
完全に剛典につられた。
『剛典、私に剛典が居てくれるように、剛典には私が居るよ。
だからさ、安心して頑張って、ここに帰って来な』
「ん、ちゃんとここに帰ってくるよ。
俺には、Aが居てくれてるから」
その言葉で、私の涙も止まらなくて、
私達は抱きしめ合いながら泣きじゃくって、朝を迎えた。
「ははっ、目が赤いや」
『瞼も腫れたね』
「でもお揃いだね」
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年6月22日 19時
