浅くない傷 ページ42
Takanori.I
Aのマネージャーが解雇になり、逮捕された。
それからHIROさんの権限でAの仕事を調べた結果、
いくつかの仕事が偽装だということが分かった。
確かにドラマとかは実際の物だけど、
雑誌の撮影や、取材、それらが偽物と分かり、
事務所はその対応に追われていた。
心と体に浅くない傷を負ったAは、今病院で点滴を打たれてて。
俺とNAOTOさんで先生から話を聞いた。
医者「栄養失調、貧血、低血糖、過労が診られます。
HIROさんからお話はお伺いしております」
岩田「……」
医者「この件に関して、お辛いのは坂本さんだけではありません。
きっと、岩田さんもお辛いでしょう。
どちらも責任を感じ過ぎないように……」
岩田「……ありがとうございます」
先生の気遣いに、俺は声を震わせないようにするのがやっとだった。
隣にNAOTOさんが居てくれて、どれだけ心強いか……。
医者「入院するということも可能ですが、如何しましょうか？」
岩田「……Aは、何か言ってましたか？」
医者「本人は、自宅療養を希望されてます」
岩田「……本人の意思を、尊重させてあげてください」
医者「分かりました。
ただ、これからの話は坂本さんにはお話してません。
これから薬を何錠か出しますが、中には作用が強い薬もあります。
間違ってそれを過剰摂取してしまうと、危険ですので、
必ず、岩田さんと岩田さんが信用できる人だけが管理してください」
岩田「……分かりました」
直人「そこは、僕らも協力します」
医者「よろしくお願いします」
話が一段落した。
その時だった。
医者「それから片岡さんだけ、少し残っていただけますか？」
直人「僕、ですか？」
医者「はい」
直人「分かりました。
岩ちゃん、少し待ってて」
岩田「分かりました」
俺は診察室を抜けて、廊下のソファーに座り込んだ。
一人の時間になると考えてしまう。
もっと早く、どうにかならなかったのかって。
他の人から見たら、たかが一ヶ月半かもしれない。
けど、Aからしたら、地獄の一ヶ月半だったんだ。
その事を思うと、俺は悔しくて仕方が無かった。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年6月22日 19時
