違う安心感 ページ40
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最初に、電話の音が怖くなった。
いつの日か、家の鍵を開けるのが怖くなった。
いつの日か、車のドアを閉める音が怖くなった。
いつの日か、誰かの声が怖くなった。
このことは、誰にも話せなかった。
これも仕事だって言われたくなかったから。
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いつの間にか、寝室のベッドに居た。
何日かぶりのベッドの感触を感じてると、声が聞こえた。
マネ「体調が悪いのであれば、こちらで処置をしてから現場に出します。
先方にも迷惑がかかっているので、早くAを出してください」
岩田「いやいや、今にも倒れそうな状況なの知ってます？
処置もクソも、今出す方が先方に迷惑かけるでしょう」
マネ「顔色は化粧で誤魔化せる、体格は服装で隠せる。
何か問題でも？」
岩田「問題しかないでしょ？
そんな状態でろくに仕事できるかって話ですよ」
玄関で、二人が言い争う音が聞こえた。
行かなきゃいけないのは分かってる。
けど、体が動きそうになくて泣きたくなってると、誰かが頭を撫でた。
「坂本、大丈夫だよ」
『登坂さん？』
登坂「おはよう、坂本。
辛かったね」
ゆっくり瞼を開けると、そこには登坂さんが居てくれてた。
頭を撫で続ける登坂さんの手は、不思議と怖くなくて。
剛典くんとは違う安心感が合った。
今までの人と、違ってた。
マネ「一旦確認させてください。
それ次第でこちらでも判断します」
岩田「何をどう判断すんのか説明してくれますか？」
『どうして、登坂さんが？』
登坂「岩ちゃんに呼ばれたから。
ちょっと手を貸してくださいって」
『……』
登坂「岩ちゃんは、坂本のことが大好きだから。
だから今向こうで戦ってる」
『………』
登坂「俺も来てびっくりしたよ。
今までダボダボの服しか来てなかったから気づかなかったけど。
こんなに痩せ細って、顔色も悪くて」
『…………』
登坂「ずっと、苦しかったんだよな。
岩ちゃんも忙しかったから、余計言葉に出来なかったな」
瞬きする度に涙が零れる。
鼻をすすると、登坂さんが優しく微笑んで涙を拭ってくれて。
「臣、今からHIROさん呼ぶことになったからさ」
登坂「分かりました」
「あ、目覚めたんだ、おはよう」
『TAKAHIROさん……』
敬浩「A、頑張ったな」
寝室に入ってきたTAKAHIROさん。
二人の優しい言葉の数々に、涙が止まらなかった。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年6月22日 19時
