決意 ページ39
Aを抱きしめた俺は、心に決めた事がある。
俺はスマホを急いで取り出して、動画モードで音声を録り始めた。
「A、明日さ、やっぱりHIROさんの所に行こう」
『何で？』
「仕事、絞ろうよ」
『……は？』
「これは嫌だなって仕事、HIROさんに伝えよう？
それで、Aが挑戦したいこと伝えようよ」
『勝手な事言わないでよ！！』
この日初めてAの声が聞けた。
暴れるけど、連日の疲労が溜まって弱ってるAと俺じゃ、
火を見るより明らかで。
「A、」
『だって私達は商品で、数ある商品の中から私を選んでくれた。
だったら、たとえ嫌なことでもどんなことでも、
笑顔で、嫌がらず、心を殺して、向き合うのが仕事でしょ？
私達は商品だから、心は無いんでしょ？』
Aから聞かされる言葉一つ一つが辛かった。
『私達がその仕事をやることで、事務所の名前が上がるなら……。
やるしかないじゃん……』
「それ誰に言われたの？」
『…………マネージャー』
その瞬間、俺は腹が立った。
元からあの人の考え方や、Aの扱い方には度が過ぎてたと思う。
けど、今回の件で我慢の限界だ。
大事な人をこんな目に遭わせといて、任せられるかって話だ。
俺はAを放すと、今度はおでこをくっつけた。
「A、急だけどさ。
俺とマネージャー、どっちの言葉を信じる？」
『……え？』
俺の言葉に、Aが息を飲んだ。
俺はその事に内心ガッツポーズする。
漸く、こっちの話を聞けるくらい余裕が出てきた。
「一緒に長く居たのはマネージャーかもしれないけど。
俺は誰よりもAを愛してるし、これからも守っていきたいと思う。
何よりも大事だし、俺は皆が思ってるほど馬鹿でもない」
Aの力が抜けていくのが分かる。
「Aが仕事を頑張ってるのは、今の状況でも、痛いほど分かる。
正直胸が苦しくなる。それくらい伝わってくるんだ。
Aが、頑張ってきたんだなってのが、ちゃんと伝わるよ」
「だからA、もう一度聞くよ」
「俺と、マネージャー。
どっちの言葉を信じる？」
「Aの、気持ちで答えて」
『…………』
「……A」
『剛典くん、』
Aは涙を流し始めた。
『剛典くんを、信じる……』
『助けて、剛典くん……。
もう、嫌だよ…………頑張りたくない……辛いよ…………』
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年6月22日 19時
