寒い部屋 ページ36
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バラエティの収録も無事に終わった。
以前撮ったブイなどの感想の収録だったりしてたので、まだ楽だった。
まぁ、彼との付き合い公表後初のバラエティだったので、
多少話題を振られたけど、さっきの撮影に比べればまだマシだった。
マネ「これで今日はおしまい。
明日朝から撮影だから、遅刻しないように」
『はい』
と言って帰宅したけど、家に彼は居ない。
彼も彼で撮影があって、暫くは帰宅できないって言ってた。
『ただいま……』
シーンとして、寒い部屋。
その日私は、電気も点けずに、リビングのソファーで座ったまま、
気がつけば夜が明けていた。
眠れなかった。
けど、何とか重たい腰を上げて、シャワーを浴びて、軽く化粧して、
準備を整えてから、迎えに来てくれるマネの車に乗り込んだ。
マネ「今日はドラマの撮影で、朝はベッドのシーンからだから」
『……分かりました』
またそういう撮影か。
少し嫌だなってオーラが出てたのだろうね。
マネ「間違っても昨日のような雰囲気で撮影はしないでよ。
今日はちゃんと合意の上でのシーンなんだから、そこ気をつけて」
『……はーい』
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「いいね、その顔、俺好きだよ」
『ほんと？すごい嬉しい……っ』
「もっと、よく見せてよ」
『んふふ、よく見て……？
もっと、わたしだけをみて……？』
私が撮影してるのは不倫ドラマだ。
私が不倫相手なのだけど。
実際に、やってるわけじゃない。
けど、そう言う雰囲気を演じてるから、心苦しくなる。
撮影の合間、ずっとその気持ちしかなくて、楽しいと思えなかった。
「雰囲気良かったね」
『本当ですか？』
「良ければこのまま俺とワンナイ無い？」
『ごめんなさい、私彼氏居るので……』
「え〜〜、良いじゃん。
もしかしたら彼はあるかもよ？」
撮影再開してくれないかな。
撮影の準備でまだ開始しないのは分かる。
昨日の今日でこれは嫌だ。
でも、私は役者だ。
心を殺せ。私を殺せ。
『……ごめんなさい。
たとえ二番でも三番でも、私は彼が好きなので』
「俺が君を一番に愛してあげるから、ね？」
『すみません』
私を殺せ。
何度も、何度も、そう思い込ませた。
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そして私は今日も、彼が居ない寒い部屋に帰る。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年6月22日 19時
