距離 ページ14
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今日は撮影はお休み。
なんだけどレコーディングがあるので、お休みではありません。
これが終わったら、今度は雑誌の撮影。
『休みが欲しい』
マネ「頑張れA」
それが終わればオーディションやら番組収録だわで追われている。
『仕事多すぎ』
マネ「ハイハイ行くよ〜」
『もう少し労わって……』
労働基準法ってなんだっけ。
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Takanori.I
スケジュールの都合で一足先に東京に戻ったA。
俺はまだ兵庫に残ってて、コンテナ街での撮影が続いていた。
だから撮影が終わって、ホテルでゆっくりしてる時間に、Aと通話している。
「そっちはどう？」
『休みが欲しい、切実に』
ここ最近Aは忙しそうだ。
出会った頃から売れっ子だったAはドラマから何からって大忙し。
「愚痴でも何でも聞くよ？」
『ありがとう剛典くん。
でも大丈夫』
「A……」
『私、愚痴るのすんごい苦手でさ。
言葉にしたいけど、難しいんだよね』
その言葉、初めて俺の前で泣いた時も言ってた。
酒が入ってある程度肩の力が抜けた時。
―――
『ごめんなさい』
「どうした？何か辛いことあったの？」
『……何が辛いか分からない。
けど、それを言葉にしたら、もう立ち上がれそうにない。
だから、愚痴れないんです私』
―――
何度も、ごめんなさいと泣きじゃくるAをその時初めて抱きしめた。
「頑張ろうとする所はAのいい所だけどさ」
『ん』
「俺心配だなぁ」
電話越しに鼻をすする音がする。
こういう時、なんで俺は隣に居ないんだろうって思う。
「ごめんな、隣にいれなくて……」
『んーん、剛典くんは、何も悪くない』
「Aも悪くないよ」
『ん……』
もう一度鼻をすすったかと思うと、Aは言ってきた。
『あのさ、剛典くん』
「なに？」
『……頑張ったね、って……、偉いね、って言ってくれない？』
息を飲んだ。
俺には、家族も、三代目 J Soul Brothersっていうチームもある。
けど、Aは、どちらも無い。
「A、頑張って、偉いね、A」
『っ……』
電話して泣いたのは初めてだった。
それくらい、あの子の心を思うと、俺まで辛くなった。
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あぁ、この距離がもどかしい。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年6月22日 19時
