第44話【 君のためなら 】 ページ44
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柔らかな微笑みを浮かべたユーリは、まるでAを逃がさないとでも言う様に手を握る。
「 それで…今度はどんな困り事かな。」
『 あー…いや、そんな大層な事でもないと言うか…出来れば手を離して欲しいと言うか…。』
首を傾げたユーリは、その答えでは気に入らないと伝える様に指を絡める。
いや、ユーリさん。ここ廊下だから。
他の生徒達からの視線が痛いから。
『 …明日、買い物に行きたいんですけど、友人達は用事があるらしくて。一緒に行ってくれそうな人を探してました…。』
「 それなら僕が一緒に行って案内してあげる。」
『 え。』
「 大丈夫、良いお店もちゃんと知ってるから。ね? 」
『 …いや、でも、』
「 遠慮なんてしないで。」
いや、遠慮ではなくて。身の危険を感じるというか。
どうするべきかと視線を泳がせるも、繋がれた手が視界に映れば頷くしか道はない事を思い知る。
ユーリが嫌な訳ではない。
まだ、彼の距離感に慣れる事が出来ないのだ。
『 それなら、お言葉に甘えて…。』
「 良かった。やっぱり、好きな人に頼って貰えるのは嬉しいからね。」
『 あ、はは…。』
グレーの瞳が細められ、2人の視線が絡んだ。
それは逸らす事が許されない。
『 あの…? 』
「 本当にA君は可愛いね。」
『 は? 』
「 ねぇ、あの時の返事…聞かせてくれる? 」
『 返事…。』
「 そう、図書室での告白の返事。」
『 …今は誰とも付き合う気は、』
そこまで言葉を発した所で、ユーリの人差し指がAの唇に触れた。
「 ふふ、そう言われると思ってたからね。全部は言わせてあげない。」
『 んむ、』
「 それに、A君は相手は1人だけで良い…それなら僕も君だけと真剣に付き合わないと、ね? 」
『 ……。』
ね?と同意を求められても何と答えれば良いのか分からない。
取り敢えず言いたい事は俺から離れてくれ、って事だ。本当に目立ってるから。
『 あ、明日!どこで待ち合わせしますか?! 』
「 あれ…良い雰囲気だったと思うんだけど…。逃げられちゃったか。」
彼の視線と手から逃れる様に身を
そうだなぁ、と考え込んだユーリ。
「 待ち合わせの場所はこの学園の正門、時間は…9時くらいでどうかな。」
『 分かりました、大丈夫です。』
「 それじゃあA君、また明日。楽しいデートにするから期待しておいて。」
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花冠(プロフ) - 2017年…四年前の作品で良い物を見つけてしまった…!もっと先に見つけれたら更新されて行く楽しみが味わえたかも…。すごい読みやすいですし、設定が神です!チビちゃんかわいい… (2021年3月18日 13時) (レス) id: 9f55fa5e42 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - 雛菊さん» 有難うございます、とても嬉しいです…!これかも期待に応えられるように精進させて頂きますね!これからもご愛読、よろしくお願い致します! (2017年12月1日 18時) (レス) id: 14a110e835 (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - 通知リストにあるかな〜と探すぐらい好きな小説です!とても読みやすくて大好きです!! (2017年11月30日 18時) (レス) id: b475004931 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - 風音迷夜さん» 沢山のお褒めの言葉…ありがとうございます!好きになって頂けてとても嬉しいです…チビは本当に人気がありますねw (2017年11月25日 16時) (レス) id: 14a110e835 (このIDを非表示/違反報告)
風音迷夜 - ありきたりじゃない世界観に分かりやすい説明、この作品好きになりました!チビちゃんかわいいなもう!僕惚れちゃった←チビドラゴンにww (2017年11月22日 21時) (レス) id: b791237619 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にじ | 作成日時:2017年9月26日 0時