【 男主 】龍に好かれる体質のようで【 BL 】

第１２話【 契約 】 ページ12

.



にこにこと上機嫌なイリスをAは、ジト目で睨み付ける。
この世界の常識がこれなんだとしたら生きて行ける気がしない。



「 そんなに怖い顔しないでよ。綺麗なお顔が台無しだ。」

『 うっせえ。』

「 もう…A君は意外と口が悪いね。」



楽しげに目を細めるイリスに最早、溜め息しか出ない。
龍(ドラゴン)を撫でていた手を止め、イリスへと向き直る。
どの組に配属されるかなんて既に分かりきっているが…。



「 ふふ、でも時々見せる素直な所は可愛いね。A君はツンデレってやつなのかな？ 」

『 ちげぇよ！！さっさとクラス言えや！！ 』

「 せっかちだなぁ…。まぁ良いさ、君は今日から空組の生徒だ。」



予想は大当たり。既に龍(ドラゴン)を所有している状態のAを学園長(イリス)が他の組に入れる訳がない。



「 そうだ。序(ついで)にその子との契約も済ませてしまおう。」

『 …契約？ 』

「 うん、契約。君はその黒き龍(ドラゴン)…から鱗を貰っているだろう？それは、簡易契約だ。それを本契約に変える事で龍(ドラゴン)は本来の力を120%発揮する事が可能になるんだよ。」

『 どうすれば？ 』

「 第一段階である龍(ドラゴン)より自身を認められる事は既にクリアしているから、後は簡単だよ。彼に、名を授けるんだ。」

『 名前、か…。』



隣でAを静かに見詰める龍(ドラゴン)。

ぱっと頭に浮かんだ名前。
何故だかそれは彼にぴったりな名前だと思った。



『 ──…ゼノン。お前の名前はゼノンだ。』



ゼノンはその名を気に入った様で、すりすりと頭を擦り寄せる。そして、ゼノンの身体が淡く発光し、その首元にチョーカーの様なモノが付けられる。



「 契約成立だね。A君、君は素晴らしい才能を持っている。」

『 はあ…。』



才能と言われても、何の才能なのか分からない。
気の抜けた様な返事を返すしかなかった。



「 ふふ、それじゃあ改めて。ようこそ、聖バラッド学園へ。歓迎するよ、A君。」

『 …はぁ。よろしくお願いします。』



この時は知らなかったのだ。

この聖バラッド学園への編入生という存在がどれだけ注目されるのか。

学園中で自分の事が噂されている事も。
そして、今、この世界を取り巻いている状況も。


そして、彼を見詰める１人の青年の姿も──…。


Aは、その中でどの位置に座するのか…。




.

第１３話【 忘れていた事実 】→←第１１話【 呼応する龍 】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す