同居生活49 ページ49
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明日も大学に行くのだと三人を宥め、義勇がお風呂から出た事を合図にするように、布団へと潜り込む。
今日、一緒に寝るのは杏寿郎さんで。
布団の中が直ぐにぽかぽかと暖まって、自然と瞼が重くなる。
少しばかり湯冷めしてしまった手足の先が、杏寿郎さんの体温を分け与えられて、ほわりと熱を持ち始めて。
『ふふ、やっぱり杏寿郎さんはあったかいですねぇ』
「寒いのならもっと此方に寄るといい」
『……それなら、すこしだ、け』
「愛いなぁ……おやすみ、A」
ふわふわとした意識の中、杏寿郎さんの腕に包まれた記憶を最後にふつりと私の意識は途切れたのだった。
ふと、意識が浮上して薄らと目を開く。
目の前には、目を閉じた杏寿郎さんのご尊顔。
何時もの快活さは鳴りを潜め、すうすうと規則正しい寝息が形の良い唇から零れている。
こうして寝顔を見ていると幼さを感じられて、少しだけこれが悪い事であるような罪悪感があった。
じ、と杏寿郎さんの寝顔を拝みながら今なら杏寿郎さんを吸えるのでは?と心の中の悪魔が囁く。
……残念ながら私の中に天使はいなかったようで。ごきゅりと知らず唾を飲む。
『……しつれい、します』
起きられても困るのだけれど、そう言わずにはいられなかったと言いますか。
杏寿郎さんは私の体を抱き締めているので、吸える場所が限られている……けれど!
まるで私を誘うように目の前に晒された杏寿郎さんの首筋!
そっと体を寄せて、杏寿郎さんの首筋に顔を埋める。
すう、と吸い込めば、陽だまりやお日さまのような暖かい香りが鼻腔を擽った。
『はぁ、好き……』
そろそろと体を離しながら、杏寿郎さんの胸へと顔を押し付けるように布団の中へ潜り込む。
いや、義勇に続き杏寿郎さんも吸ってみた結果としてはセラピー効果がある事を再確認しただけで。
これ、癖になりそうなのですが大丈夫?私、推しの寝込みを襲ったとか、同意なしに推し吸いを行った罪とかで捕まらない?
「もういいのか?」
『ひっ!』
「よもや、寝込みを襲われてしまうとはな」
『な、えっ、いつから……?!』
「ふっ……何時からだと思う?」
アッ、その顔は最初からですね?つまり、寝たフリをしていたと。
余りにも酷い仕打ち!!情状酌量の余地もない!!
「次は俺の番だな」
『え』
この後、杏寿郎さんが満足するまで吸われた私。
アラームが鳴る頃には起き上がれない程のダメージを負っていました。
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chiaki0708(プロフ) - ムフフが止まりませんでした (2021年12月6日 14時) (レス) @page49 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、コメントありがとうございます!好きな設定だと言って貰えて嬉しいです!雰囲気上手だと言って貰えて嬉しい限りです…更新は遅めですがこれからも頑張りますね! (2021年8月11日 12時) (レス) id: 7dcf5a18d1 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - この設定、素敵です!彼らの醸し出す雰囲気上手ですね。このお話に出会えて良かった! (2021年6月27日 21時) (レス) id: ca18a121f6 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - もしゃこうさん» 最高だなんて嬉しいです!私も書いていて楽しいので更新頑張ります!!ふふふ、ニヤニヤして貰えたのなら作者冥利に尽きますね!! (2021年2月9日 0時) (レス) id: 7fde5a79e3 (このIDを非表示/違反報告)
もしゃこう(プロフ) - めっちゃこのお話最高です!続きが気になります!そして自分はこれを読みながら1人部屋でニヤニヤしてますw (2021年2月8日 15時) (レス) id: eecce6b130 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にじ | 作成日時:2021年1月18日 21時