同居生活1 ページ1
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今年は本当に激動の一年だった。
激動過ぎて、気持ちが追いついていない。
私、結野Aは数日前に祖母を亡くし天涯孤独の身となる。
いや、正直な話。天涯孤独という言葉を聞いてもピンとこなかった訳だけれど。
両親は私が小さい頃に交通事故で亡くなり。
そんな私を引き取り育ててくれたのが、母方の祖父母だった。
そして、私も知らぬ内に少ない親戚の方々にも不幸が相次ぎ。
祖父が病気で亡くなり、その心労から祖母も倒れ数日前に……と振り返ってみても怒涛過ぎた今日この頃。
そして私は大学二年、二十歳という若さにして天涯孤独の身となってしまったのだ。
普通こんな事ある??と頭を抱えたのは記憶に新しい。
そんなこんなで私の手元には莫大な遺産と祖父母が暮らしていた古き良き日本家屋が残った。
遺産相続の話を聞いた時は、その金額に意識が飛びそうになった。
『もう一生遊んで暮らしても使い切れない気が……?』
新しく開設した口座の通帳を開き、溜め息を一つ。
大学も入りたくて入った訳でもないし、退学して祖父母の家へと引っ越すのも有りかな。
祖父母との仲は良くも悪くもないという感じで。
亡くなったと聞いた時も特別悲しいという気持ちが沸かなかった。
我ながら薄情な孫だなあ、と自分に呆れたりもして。
『とりあえず、お風呂入ろ。なんか疲れたし』
神様。
もし本当に神様がいるのならば。
どうかこれからは平穏な生活をさせて下さい。
神様なんて信じている訳ではないけれど。
きっと疲れていたのだと思う。
いつもなら絶対にしない神頼み、だなんて。
脱衣所で服を脱ぎ、髪ゴムを外す。
さらりと流れ落ちる濡れ羽色の艶やかな黒髪。
髪を洗い、シャワーから降り注ぐ温水を頭から被る。
緩く髪を結って湯船へと体を沈めた。
明確な道標のない今、これからどうするべきか。
沈みそうになる心から目を背けるように、そっと目を閉じる。
そろそろ上がろうかと、目を開け立ち上がりかけたその時。
「っ!!」
『え、……っ?!』
ぐにゃりと空間が歪んで。
何かが湯船へと落ちてきた。
凄まじい水飛沫に浴槽から湯が飛び散る。
私の真上に落ちて来なかった事は不幸中の幸いと言えるだろう。
何せあの勢いだ。当たってたらたぶんだけど死んでた。
その、落ちて来た彼も無事そうで何より、なんだけれども。
大丈夫かな?
私の胸に顔が埋まったまま微動だにしないのですが。
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chiaki0708(プロフ) - ムフフが止まりませんでした (2021年12月6日 14時) (レス) @page49 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、コメントありがとうございます!好きな設定だと言って貰えて嬉しいです!雰囲気上手だと言って貰えて嬉しい限りです…更新は遅めですがこれからも頑張りますね! (2021年8月11日 12時) (レス) id: 7dcf5a18d1 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - この設定、素敵です!彼らの醸し出す雰囲気上手ですね。このお話に出会えて良かった! (2021年6月27日 21時) (レス) id: ca18a121f6 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - もしゃこうさん» 最高だなんて嬉しいです!私も書いていて楽しいので更新頑張ります!!ふふふ、ニヤニヤして貰えたのなら作者冥利に尽きますね!! (2021年2月9日 0時) (レス) id: 7fde5a79e3 (このIDを非表示/違反報告)
もしゃこう(プロフ) - めっちゃこのお話最高です!続きが気になります!そして自分はこれを読みながら1人部屋でニヤニヤしてますw (2021年2月8日 15時) (レス) id: eecce6b130 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にじ | 作成日時:2021年1月18日 21時