同居生活12 - 煉獄杏寿郎 - ページ12
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昨夜はあまり眠れなかった。
あれよあれよと巧妙な話術に乗せられ、結果的にはAと同衾する事が決まってしまっていた。
男として不甲斐なし!!
しかし意識していたのは俺だけだったらしい。
布団に二人で潜り込んで直ぐ、隣からは規則正しい寝息が聞こえてきた。
「よもや、男の前でここまで無防備に眠られても困るのだがな……」
先に寝たのならば丁度良い、自分は床で寝るかと体を起こそうとしたその時。
狙い済ましたかのようにAが寝返りを打ち、俺の腕を掴んだ。
ぎゅう、と抱き締められた腕は彼女の柔らかな膨らみに包まれ沈む。
「ぐっ……落ち着け杏寿郎。俺は鬼殺隊の柱で長男、我慢など容易い事だ、集中しろ!」
『ん、ぅ……』
「よも、よもや……お、起こしてしまったか?」
視線を下げれば、ぽやんとした表情で薄らと目を開けたAがいた。
初めて、顔をしっかりと見た。
さらりと流れる濡れ羽色の黒髪。
少しツリ目がちな瞳を縁取る、長い睫毛。
スッと通った鼻立ちに、健康的な色の小さな唇。
俗に言う、美人な顔立ちに理想的な体付き。
ぼんやりと開かれていた瞳が再び閉ざされた事で、俺は大きく息を吐いた。
どうやら無意識の内に呼吸を止めていたらしい。
「目が覚めなかったのは良かったが、これはいかんな。うむ、熱い!!」
色恋に現を抜かす暇がなかったとは言え、自分がここまで女性慣れしていないとは……よもやよもやだ!!
彼女が寝ているのを良い事に、その寝顔を盗み見る。
同時に、腕に当たる柔らかな感覚と体温を意識してしまい風呂場での事を思い出す。
動悸が早く、呼吸も荒い!!
明日は絶対に別の布団で寝ようと心に決め、目を閉じる。
結局、眠りに落ちたのは空が明るみ始めてからで。
数時間後にはAから起こされる事になる。
『杏寿郎さん』
Aは俺の事をそう呼ぶ。
しかし、俺と目が合ったら杏寿郎、と呼ぶと言っていなかっただろうか。
朝、目が合ったと言っていたが一瞬では無効なのだろうか。
「うまい!!」
『ふふ、嬉しいです』
Aは料理が得意な訳ではないと言うが、彼女が作ってくれる物は全てうまい。
俺がうまいと伝える度に、とても嬉しそうに微笑む姿もかわいらしい。
うむ、今日は出掛けるとも言っていた。
杏寿郎、と呼んで貰えるように俺も鍛錬しなくてはな!
しかし……うむ。
その服は肌が見え過ぎではないだろうか!!
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chiaki0708(プロフ) - ムフフが止まりませんでした (2021年12月6日 14時) (レス) @page49 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、コメントありがとうございます!好きな設定だと言って貰えて嬉しいです!雰囲気上手だと言って貰えて嬉しい限りです…更新は遅めですがこれからも頑張りますね! (2021年8月11日 12時) (レス) id: 7dcf5a18d1 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - この設定、素敵です!彼らの醸し出す雰囲気上手ですね。このお話に出会えて良かった! (2021年6月27日 21時) (レス) id: ca18a121f6 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - もしゃこうさん» 最高だなんて嬉しいです!私も書いていて楽しいので更新頑張ります!!ふふふ、ニヤニヤして貰えたのなら作者冥利に尽きますね!! (2021年2月9日 0時) (レス) id: 7fde5a79e3 (このIDを非表示/違反報告)
もしゃこう(プロフ) - めっちゃこのお話最高です!続きが気になります!そして自分はこれを読みながら1人部屋でニヤニヤしてますw (2021年2月8日 15時) (レス) id: eecce6b130 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にじ | 作成日時:2021年1月18日 21時