人魚の泡

泡沫４ ページ5

「てかさ、藍川はあれで良いわけ？」


『あれ？』


「あの二人が付き合ったこと」



あーね、そう返して卵焼きを口に入れる
甘いのが口の中にふわっと広がる

うん、甘い


『別に、いいんじゃないの？』



でも、少し甘ったるい

側に置いてあった水筒を手に取り、お茶を口に含み飲みほす





「いいんじゃないのって辛くない？

その、親友が自分の好きな人と付き合うとか……



前に 岸くんのこと好きって言ってたじゃん」





最後の一言に箸が止まった

チラッと周囲に視線を送り誰も聞いていないことを確認する




『大きな声で言わないでよ。』

「あ、悪い……」



バツが悪そうな顔をして目線を下に下げる



心配しているのは分かっている

でも、そこまで落ち込んでない



『いいよ、別に

岸くんが幸せならそれで』



どのみち彼の隣に私の居場所はない

それならせめて、彼の幸せを願いたい


「ふーん、そっか」


おっタコさんウィンナーもーらいっ

美味しそうに頬張る神宮寺くん


『どーぞ』


別に構わない、岸くんと誰が付き合おうと

仮にあの子であっても興味はない


『だって本気で好きな人の恋なら応援したいでしょ』




そう、未練なんかない

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