【最遊記】桃源郷の魔法使い〔壱〕 (ページ43)

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Charismatic④ ページ43

しばらくすると再び寝息が聞こえてくる

八戒「…可愛いなぁ」

思わず呟くと、三蔵は溜め息を吐いた

三蔵「…寝かし付けが必要なんざ、やっぱガキだな。ガキ以下だ」

八戒「まあまあ、いいじゃないですか」

三蔵「記憶がない期間を除いたとしても、普通ならそろそろ思春期とかで兄離れするモンじゃねーのか」

八戒「やだなぁ。兄離れなんかされたら僕、生きていけませんよォ」

三蔵「…冗談に聞こえねー」

八戒「割と本気ですからね？」

三蔵「…あ、そ」

いろいろ察した様子で、煙草を吸い始める

三蔵「そんなことより…」

八戒「あの“防護壁”の件、ですよね」

三蔵「ああ。俺は一瞬しか見ていないが…何がどうなったんだ？」

八戒「…僕が防護壁を張った時に、その内側からAも手を翳したんです。そしたら、威力が増したというか強化されたというか…」

三蔵「Aも気孔術を使えるようになった、という訳ではないのか」

八戒「ええ。僕が押され気味だったのを見て“何とかしなきゃ”って咄嗟の行動だったみたいで…本人も、何が起こったのかよく分からないそうです」

三蔵「…そうか」

灰皿に煙草の灰を落とす

三蔵「…いずれにせよ最も問題なのは、それを紅孩児の目の前でやりやがったって事だ＃」

八戒「あはは…なかなか大胆な自己PRになりましたね」

三蔵「笑い事じゃねェぞ」

まあ、不可抗力っちゃあ不可抗力ですけどねェ

八戒「…心配ですか？」

三蔵「面倒事が増えそうでな」

八戒「それを言ったらキリがないですよ。“育児”はイレギュラーの連続ですから」

三蔵は舌打ちをして煙草をもみ消す

三蔵「とにかく、Aからは目を離さないようにしておけ」

八戒「はいはい」

Aをそっと抱き寄せ、目を閉じた

翌朝

目を覚まして時計を見る

6時…まだ少し早いかな…

ギュッと服を握られる感覚がして視線を落とすと、Aの瞳に涙が滲んでいた

それを拭ってあげ、手を重ねる

八戒「A」

何度か名前を呼ぶと、ゆっくり瞼を上げた

八戒「おはよう」

「…ん」

僕の胸に顔を埋める

八戒「…怖い夢でも見た？」

「分かんない…」

包み込むように抱き締めながら問うと、“いつもと同じ回答”が返ってきた

おそらく、Aの記憶は閉じ込められているだけで、脳内から完全に消えた訳ではない

だからこうして、悪夢や不安感に苛まれることが度々あるんだと思う

八戒「…そっか」

Aを苦しめるもの全部、僕が背負えたらいいのに…