【最遊記】桃源郷の魔法使い〔壱〕 (ページ35)

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Change seats③ ページ35

起こしてしまわないように、そっと手を離す

八戒「では、僕は食器を片付けてきますね。悟空も寝る準備を始めていてください」

悟空「はーい」

厨房で洗い物をしていると、背後に気配を感じた

八戒「どうしました？」

三蔵「…コーヒー」

それだけ言う三蔵に、思わずクスリと笑う

八戒「そんなに心配しなくても、Aなら大丈夫ですよ。少しですが食事を取って、薬も飲みましたから。今は眠っています」

三蔵「…俺はコーヒーを頼みに来ただけだが」

八戒「独り言です」

三蔵「ﾁｯ…」

悟浄「ったく…三蔵の野郎、機嫌が悪ィのなんのって」

ベッドから身体を起こす

悟浄「さて、ちょっと様子見に行きますか」

寝てると思い、ノックをせずに静かに扉を開けた

悟空「！なんだ、悟浄か」

悟浄「なんだとはなんだ」

ベッドの横に座る悟空はチラリとこちらを見て、すぐに眠っているAへ視線を戻す

八戒は…片付けか？

悟浄「で、どんな感じ？」

悟空「とりあえずは大丈夫みたい。一晩眠ればだいぶ楽になると思うって、八戒が」

悟浄「そ」

ベッドの上に腰掛ける

悟空「起こすなよ？」

悟浄「起こさねーよ」

悟空「…なんかさ、俺、すっかり忘れてた」

沈黙が広がると、悟空はポツリと呟いた

悟浄「あ？何をよ？」

悟空「Aってさ、天然で心配になることもあるけど、それもカバーできるレベルで戦闘とかめちゃくちゃ強くて、料理も美味くて、この旅もフツーに出来ると思ってた」

ふわりと優しく頭を撫でる

悟空「でも、人より免疫？ってのないし天気にも弱いし…そういえば前から身体は強くなかったなぁって」

悟浄「あー、まぁな。八戒は、例の、記憶がない数年の生活の中に原因があるだろうって言ってたが」

「ん…」

悟空「わっ、ご、ごめんっ！」

うっすらと目を開けたA

悟空は慌てて手を離した

「…お兄ちゃんは？」

悟空「食器片付けに行った。あ、でも遅ェな」

悟浄「三蔵と何か話してんじゃね？アイツも厨房に向かったみてェだし」

悟空「そっか」

そんな俺らの話はちゃんと頭に入っているのかどうか…

悟浄「Aちゃん、一回熱測ってみな？ほれ」

少し浅い呼吸を繰り返したまま動かない

悟浄「…ちょっと失礼」

変に触れないよう気をつけながら体温計を挟む

ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ

悟浄「げっ…39って…」

悟空「！？さっきより上がってんじゃん薬飲んだのに」

「…ねぇ、お兄、ちゃ…」

悟浄「あーはいはい、すぐ呼んできますッ」