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『生きていて欲しいんだ』
「！」
その言葉に目を見開くエース。
Aからはエースの顔が見えないので、Aはそのまま話を続けた。
『火拳の仲間や麦わら君とかと完全に同じ気持ちって訳じゃないけど、生きて欲しいって思ったんだ。そもそも親の罪を子供に擦り付けるとかおかしいだろ？子供だって1人の自立した人間だよ。決して身代わりでも、ましてや所有物でもない』
「……」
『あ、念のために言っておくけど、処刑の理由がもし、火拳自身がしてきたことを罪とするなら助けるつもりは無かったよ。だから味方だと勘違いしないように…って、火拳聞いてる？』
「……うるせぇババア」
『いや、確かに君から見ればババアだけども。ジンベエさん！この子誰が教育したの！？』
「ワハハハ！ガープ中将じゃあないか？」
『あ…納得。わかった。諦めるよ…』
ガープの名を聞いた瞬間、観念したAだった。
「……」
エースは声を押し殺し、涙を流す。
仲間でも兄弟でもなく、寧ろ敵同士だと云うのに、Aの言葉に涙が止まらない。
“海賊王”の息子と知った上で、“生きろ”と。
“生きていて欲しい”と。この海兵は言う。
「……っ、」
.
『……まったく。一人で泣くんじゃないよ……火拳』
俵の様に抱えられていた筈が、いつの間にかAと向き合う形で抱えられていた。
「……え、っ、うわ！見んじゃ、」
顔を隠す為にバッと腕をあげようとした、その時。
『生きて良いんだ』
「……」
『君は、生きていて良いんだよ』
Aの深緑の瞳がエースを写した。
そして、初めて見た赤の他人の屈託の無い、優しい笑顔。
「……ぅ、」
戦場の中心で、エースはAに縋り付き、声が嗄れるほど泣いた。
この日、Aはエースにとって、仲間と兄弟以外で初めて、この世に存在することを許してくれた唯一の人間となった。
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作者名：斉和 | 作成日時：2023年11月16日 19時
