＊ ページ19
.
「な、なんでそれを……」
『ロシナンテが教えてくれましたよ。お兄さんの本名を』
「………………あ！」
熟考するロシナンテ。ようやく気付いたようだ。
『…これもドジっ子故の……ですかね』
「A君には、苦労を掛けるな……」
気苦労が絶えないセンゴクだった。
.
「じゃあ、行ってくる」
『…違和感しかない』
「そうだな…」
ピンク色のハート柄のシャツに羽が大量についた黒いコートを肩に掛け、顔には道化師のようなメイクが施されていた。
『ロシナンテ中佐』
「ん？」
去り際に、Aはロシナンテの唇を奪った。
「…………」
『ご武運を。ロシナンテ中佐』
「…ああ。ありがとう」
ひっそりと出航したロシナンテの船を見送ったAとセンゴクだった───
.
.
それから３年半が過ぎたある日。
パリンッ
『あちゃー…やっちゃった…』
手元が狂って、カップを落としてしまったA。
そのカップはロシナンテが使っていた物だった。
『………ロシナンテ……？』
そう呟いたAの言葉は部屋に木霊し、跡形もなく消え去った───
プルルル…
突然、でんでん虫が鳴いた。
『…はい。Aです』
『…センゴクだ。部屋まで来てくれるか？』
『かしこまりました』
コンコン
ノックをすると、中から“入れ”と声がした。
ガチャリ
扉を開け、部屋に入る。
『一等兵A。只今参りました』
「ああ……」
『……？』
センゴクの態度に違和感を持つA。
『どうかされ「ロシナンテが死んだ」……え？』
思考が停止した。
「……ある“悪魔の実”を『大将そこまでで』…何故だ」
『彼が任されたのは“極秘任務”なんですよね。そしたら今お話しされようとしたこともトップシークレットの筈。……やめましょう。誰に聞かれるかわかりません』
『ただ』
「…？」
『今だけ涙を流すことを赦してください』
そう言ってAは大粒の涙を流し始めた。
センゴクは悔しそうに歯を食い縛り、泣いているAを抱き締めた。
『………ロシナンテ』
思い出すのは、貴方といた幸せな日々。
『う、うわぁあああ』
「う、くっ…」
ロシナンテを思い、二人は涙を流し続けた────
ああ、どうして、どうして神様はあの人を連れていってしまったんですか？
覚悟はしていたはずなのに、失うことがこんなにも辛いなんて、
知りたくなかった……
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
斉和(プロフ) - 防弾チョッキ（初心者）さん» う…！(吐血) 有難いお言葉に嬉死する…！ありがとうございます！ (2022年5月14日 1時) (
レス) id: 667609841b (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ（初心者） - 初めまして。作品拝見させていただきました。素晴らしいですね。（鼻血）天才でしょうか。 (2022年5月13日 22時) (レス) id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
斉和(プロフ) - ユイさん» ふわああ…ありがとうございます！嬉しいです！ (2022年4月27日 0時) (レス) id: 667609841b (このIDを非表示/違反報告)
ユイ(プロフ) - 面白かったです!!!最高すぎます!!!!! (2022年4月26日 19時) (レス) @page6 id: 82f627da90 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：斉和 | 作成日時：2022年4月25日 16時
