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俺は唯一縛られていない左手を握りしめて
「貴様、鬼畜かッ!!」
怒声に近い声音で言い放つと
「社畜だ」
冷静に返されてしまった。
飲み物はもってきてやる、と器用に長い人差し指でガムテープを回しながら去って行く背中に殺意を覚える。
逃げ出そうと動く左手を使ってガムテープを解こうとしたが粘着力が強く、解けなかった。仕方なく諦めて゛へし切り長谷部゛が持ってきた茶を飲んで昼食も食べずに、筋肉痛と足のしびれに耐えながら夕方になるまでひたすら字を書き続けた。
俺が苦行から解放されたのは夕方で、なんの縁か解放してくれたのは特別鎮圧部隊の゛へし切り長谷部゛であった。突然表が騒がしくなったと思ったら一つの足音と見知った影が部屋の前で止まって障子が片方開かれ、見知ったる゛へし切り長谷部゛ではない゛へし切り長谷部゛が俺の姿をとらえると障子を三回開け閉めした。なにが起きているか分からないがとりあえず助けてほしい。
゛へし切り長谷部゛から助けてもらった俺はジャージに着がえさせられたのち、゛へし切り長谷部゛に誘導されて庭に集められていた男士たちと一緒に特別鎮圧部隊の本丸に連れていかれ保護された。
あとできいたことなのだが、捕らえられた俺の元主は敵方と通じていたがため捕らえられたそうだ。そして通報したのは゛へし切り長谷部゛だったそうで、主の不振な行動にいち早く気づいて報せたこの一件で彼は保護対象ではなく、鎮圧部隊の二番目の地位についている二人のうちの一人セイに召し抱えられることになった。セイのもとで毎日忙しそうにしている゛へし切り長谷部゛は、あの本丸にいたときよりも生き生きしていて、主の為に働いている姿はみていて羨ましい。
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作者名:新選組 | 作成日時:2017年1月1日 0時