俺がやった悪い事は、もうどうでもいいけどさ。最近、時間が過ぎていくと共に＿＿自分の命が削られていく気がするんだ【薫成り代わり三章】 (ページ18)

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六十七刻ページ18

嗚呼、遂に言ってしまった。朧に俺の運命を告げてしまった。もう後には戻れないなあと思いながら、朧は次は何と言ってくるかと、わくわくしながら待つ

だがいくらまっても朧は何も言わない。このままなにも言わないのかなとおもいきや、突然ぼろぼろと大粒の涙を零し始めた

下唇をかみしめて静かに涙を流している。生憎生まれてこの方女性を泣かせたことも慰めた経験もない俺は、朧の周りをオロオロしながら右往左往してしまう

え。え。え。なに、どうすればいいの？俺どうすればいいの？

どうすることもできずにおろおろしていると、朧は唐突に立ち上がり

朧「いってまいります」

A『まてまて、どこに行く気だ。まさか風間を殺める気じゃないだろうな』

今にも走り出さんとする朧の手を掴む。落ち着けと、俺も立ち上がって、朧の両肩に手を置いて押さえつけるようにして無理やり座らせる

A『あのなー朧。風間殺しても俺どっちみち死ぬよ』

どうしてと言いたげな朧の手をとって指と指を絡ませる。俗に言う恋人つなぎと言うやつだ

A『むつかしいことは俺もあんまりわかんないけど。ただこれだけは知ってる。例え朧が風間を殺めたとして、悠久の時の流れのなかで決まってしまっているんだ、俺が誰かに殺されてしまうことは。

朧が風間を殺せば風間の一族の誰かが、もしかしたら天霧に、はたまた違う人物に殺されてしまうかもしれない。または見ず知らずの人間に殺されるか

俺は生まれたときから覚悟してるんだ、この運命を受け入れている』

俺はどんな表情をしてるかな。なんとか笑みを作ってはいるが、眉尻が下がっているのが自分でもわかるし、今まで吐き出せずにいた感情が決壊して涙が溢れてしまいそうになる

受け入れてはいた。自分の運命を。だから誰にも話さずにいた、周りにいる者達が俺の将来を憂うのが嫌だから。自分の未来に対する恐怖と悲しみを胸の奥にしまい込んで蓋をした

だが今こうして朧に話すことによって蓋が外れてしまい、気持ちがあふれ出す

殺されたくない。死にたくない。この先もずっと生きていたい、皆とバカやって笑っていたい。おもいがあふれ出て、気がつけば、涙を流していた。涙をとめようにも、とどめなく涙があふれでてくる

次第に涙は嗚咽を誘う。えぐっ、うっ、うっ。部屋の中で俺の嗚咽がいやに耳障りだ