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かこんっと
重い瞼を開けてまだ覚醒しきっていない虚ろな目で、ぼんやり天井を見つめる。
昨日は家入さんや夏油さんに色々な駄菓子を教えてもらい、最終的には夏油さんに奢ってもらった
どれも身体に悪そうなものばかりだったが、選ぶだけでもそれなりに楽しかった。
視線を室内の机の方へと向ければ、机上には彼ら選りすぐりの変なのがこんもりと入ったスーパーのレジ袋が置かれている。
布団から抜け出して背伸びをする。
『……ん、こんなには持っていけないよなぁ』
リュックで行くとはいえ、この量は多すぎる。朝食を済ませたら更にこの中から選ぶしかない。
「A様、朝食のご準備が出来ております。身支度が済みましたらお越しくださいませ」
『……っ!?』
障子を挟んで声がかかる。
驚いて咄嗟にレジ袋を隠すが、侍女は一声かけると何処かに行ってしまった。
足音が遠くなるのを確認して、深い息を吐いた。
この歳になって、しかも篠崎家の私が知育菓子をスーパーで買ってきたなんて知られたら一生ものの恥である。と言うかきっと怒られるだろう。
早くこれを処理したいので、やっぱり今日の校外学習で持っていくことに決めた。知育菓子の箱を手に取ってリュックの底に押し込んだ。
朝の身支度を済ませ、長い廊下を歩く。
中庭に生えた木には蝉が数匹相変わらず煩く鳴いている。夏ももう終わるからか、いつもよりは少し声が小さかった。
角を曲がって左手に見える廊下の1番奥、花木の絵が繊細に描かれた襖を開けて祖父が出てくる。
「おはよう。A」
『お爺様。おはようございます』
「今日は校外学習らしいじゃないか。あまり友人たちとはしゃぎ過ぎることのないように」
『もちろんです。もう私も来年から中学生になるんですから』
そう笑ってから祖父と並んで廊下を歩く。
まだ夏の残っている朝空を見ていると、頭に優しく手を置かれる。
隣を見れば祖父は微笑んで口を開いた。
「聞き分けが出来るのは宜しいが、少しくらい親や私に歯向かってもいいんだぞ」
『何言ってるんですか。反抗期なんて私には来ませんよ』
まあ既に親には少々反抗しているが。
断言した私に祖父は「そうか」と小さく笑って前を向いた。
余談だが、結局知育菓子はお祭り屋さんを選んだ。
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怠慢のにぼし(プロフ) - 緑の白猫さん» ご感想ありがとうございます!そう言っていただけて、構成に頭を悩ませた時間も無駄ではなかったのだと嬉しく思います。 (2021年2月23日 22時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ストーリーの構成も上手いし、時間軸の移動の仕方も上手いしで…。堪らなく大好きな一作です! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - 琥珀さん» こちらこそ初めまして(*´ч ` *)こちらは五条悟オチになります。嬉しいお言葉ありがとうございます!本当に励みになります (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 怠慢のにぼしさん初めまして、この小説は五条悟オチですか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怠慢のにぼし | 作成日時:2021年1月19日 20時