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揺さぶる力が段々と弱くなる。



「私…だけなの?Aちゃん」



茅乃は胸にとんっと頭を押し付けた。
私の服を掴んで握り締めて、胸の中で弱々しく声を漏らす。



「お願いだから、私の望んだ言葉じゃなくてもいいから……Aちゃんの気持ちを教えてよ…」



彼女の言葉に我に返り、反射的に背中に回そうとした手を止め、伸ばしていた腕を名残惜しく戻した。



「…A。先に戻っていなさい」


黙ってずっと見ていた祖父が、出来るだけ穏やかに声をかける。


『はい』


「Aちゃん!!」


『茅乃、離れて』



肩を押し返そうとしても彼女は首を振って、一向に離れるつもりがない。


「何とも思ってないならそう言って!冷たくあしらって!!じゃないと納得がいかないよ!!」



駐車場に彼女の声が響いた。



「ほら、離れなさい」


「や、やめてください!!」


祖父と共に様子を見ていた高専関係者の人が、茅乃の肩を掴んで引き剥がしてくれた。


数歩後ろに下がって、それから元来た道の方へ向いて歩き出す。


その場から離れてしまいたい。
早く悟たちの所に行ってしまおう。


「Aちゃん!!」


普通に歩いてるつもりが、何故か足がもたついて足取りが悪くふらふらする。



「ねえ!!待って!!」




背中から声が投げられる。





もうどうでもいい。




もう考えるのはやめた。




成るようになってしまったらいい。








「……友達でいてくれて、ありがとう」




私に聞かせるつもりがなかったのかもしれない。
微かに、消え入りそうな声でそう呟いた。








足を止めて振り返る。


地面を見ながら早足で彼女へ歩み寄る。


その足取りはさっきのようなもたつきもなく、いつも通りに歩けた。


茅乃は俯いていて、近づく私に気づいていない。



『茅乃!!』


「えっ」



驚いて顔を上げるよりも先に彼女に抱きついた。
彼女が何かを言う前に言いたいことを言ってしまおうと口を開く。



『……私こそ、茅乃にお礼を言いたい。友達になってくれてありがとう』



そこで初めて、頬に伝う熱い何かを感じるが気にせず抱き締める。



『一緒に過ごした日々が、茅乃と何気ない会話を交わした時間が本当に楽しかった』



茅乃は「うん」と頷いた。



『私だって、茅乃と離れたくない』



.

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怠慢のにぼし(プロフ) - 緑の白猫さん» ご感想ありがとうございます!そう言っていただけて、構成に頭を悩ませた時間も無駄ではなかったのだと嬉しく思います。 (2021年2月23日 22時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ストーリーの構成も上手いし、時間軸の移動の仕方も上手いしで…。堪らなく大好きな一作です! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - 琥珀さん» こちらこそ初めまして(*´ч ` *)こちらは五条悟オチになります。嬉しいお言葉ありがとうございます!本当に励みになります (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 怠慢のにぼしさん初めまして、この小説は五条悟オチですか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:怠慢のにぼし | 作成日時:2021年1月19日 20時

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