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「おら起きろよ」


殴られた方の頬を叩かれてやっと意識が覚醒する。顔を上げて睨みつけても男は特に反応を示さずに、私のケータイを見せつけて振った。


母から渡されたケータイは、着信が入って煩く震えている。



「出ろ」



受け取って通話ボタンを押して耳に当てる。



[A!さっき先生から貴女がいなくなったって電話が入ったわ!今どこにいるの!?]


今朝聞いたばかりの、母の声だ。


『……お母さん、「誘拐されていると言え」…私と茅乃は誘拐されているの。ごめんなさい』



私がそう言うと、電話の向こうの母は悲鳴のような声を小さく漏らした。



[誘拐って、貴女たち無事!?怪我してない!?]


今にも泣きそうな声が聞こえる。
それを聞いて胸がきゅうっと苦しく詰まった。



「余計なことは何も言うな。公園の公衆トイレ付近に居場所を印した地図がある。五条悟だけ来いと伝えろ」


『……公園の、公衆トイレの付近に居場所を印した地図があるから。五条悟だけ来いって』


[…分かったわ。今、悟くんに連絡するから___]



母の声はそこまで聞こえたが、ケータイを奪われて踏み壊された。



音を立てないように静かに泣いていた茅乃は、その破壊音にビクッと肩を跳ねさせる。



踏み壊されたケータイ。それに彼女の姿を見て、心の底から苛立ちを覚える。



『……何で私たちを誘拐したの』



「だから敬語を使えよ」


「きゃあ!?」


『茅乃!!』


男はナイフの柄の部分で茅乃の頭を殴った。


咄嗟に袖に隠していた呪符を取り出そうとするが、また頬を打たれる。



「行動が遅せえんだよなぁ」



倒れた先で近くにいた小柄の誘拐犯に押さえつけられ、縄で縛られた。気を失った茅乃も同様だ。



「あの五条悟の許嫁は箱入り娘と聞いて、どんなもんかといざ蓋を開けてみれば」




男は頭巾を外して気の抜けたように頭を捻った。



「案外楽勝だったな。お前」




そして、今に至る。

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怠慢のにぼし(プロフ) - 緑の白猫さん» ご感想ありがとうございます!そう言っていただけて、構成に頭を悩ませた時間も無駄ではなかったのだと嬉しく思います。 (2021年2月23日 22時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ストーリーの構成も上手いし、時間軸の移動の仕方も上手いしで…。堪らなく大好きな一作です! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - 琥珀さん» こちらこそ初めまして(*´ч ` *)こちらは五条悟オチになります。嬉しいお言葉ありがとうございます!本当に励みになります (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 怠慢のにぼしさん初めまして、この小説は五条悟オチですか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:怠慢のにぼし | 作成日時:2021年1月19日 20時

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