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「失われた記憶」編 11話 ページ1

2006年9月某日。



「じゃあねー!Aちゃん!」


『うん。ばいばい』



重そうなランドセルを肩にかけ、陽気に手を振る同級生の子に私も手を振り返す。

余程振り返してくれたのが嬉しかったのか、その子は笑顔でもう一度手を振ると慌ただしく廊下を走っていった。




『……ふう』



彼女の姿が見えなくなった辺りで、振っていた手を下ろした。


それからゆっくりランドセルを背負い、誰もいない教室を出る。私とあの子が最後だった。





まだ夏の気配が残る9月の廊下は少し蒸し暑くて、額にじんわりと汗が滲む。




あの日から5年も経った今、私は小学6年生になっていた。通う小学校は呪術なんていうものとは無縁のごく普通の学校である。





「……あがアああぁアぁぁァ」



明日の校外学習に向けて必要なものを帰り道のスーパーで買おうかと考えていると、呪いが空き教室から顔を出した。



『【(トリカブト)】』


「がぁぃああぁあ!?!?」



躊躇うことなく呪符を発動させ、祓う。


(トリカブト)の術式は最近安定して使えるようになった。



『……おぉ、ちゃんと効くんだ』



今のような低級の呪いは蓬菊(ヨモギキク)で十分なのだが、腕試しとして菫を使ってみれば、非常に楽に祓える術式だと再認識した。



爆散した呪いが消えていくのを横目に下駄箱へと向かう。



人々の記憶に残るような学校や病院は呪霊が発生しやすい。私が通うこの小学校も決して例外ではなく、稀にだが3級程度の呪いも現れる。



しかし一々祓っていたらキリがない上に誰かに見られでもしたら面倒臭いことになるので、蠅頭以外の3〜4級で尚且つ有害そうな呪いは見かけ次第こうやって祓うことにしている。




夕焼けでオレンジ色に染まった空を見上げながら誰もいない校地内をとぼとぼ歩いた。



そんな私に、唐突に声がかかる。




「よぉA」



視線を向けると、校門には通行人の視線を一身に受ける白銀髪の不審者がいて、私を見つけるとポケットから片方だけ手を出してヒラヒラさせた。




『……何、やってるんですか悟』




そう、他の誰でもない。五条悟である。

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怠慢のにぼし(プロフ) - 緑の白猫さん» ご感想ありがとうございます!そう言っていただけて、構成に頭を悩ませた時間も無駄ではなかったのだと嬉しく思います。 (2021年2月23日 22時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ストーリーの構成も上手いし、時間軸の移動の仕方も上手いしで…。堪らなく大好きな一作です! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - 琥珀さん» こちらこそ初めまして(*´ч ` *)こちらは五条悟オチになります。嬉しいお言葉ありがとうございます!本当に励みになります (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 怠慢のにぼしさん初めまして、この小説は五条悟オチですか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:怠慢のにぼし | 作成日時:2021年1月19日 20時

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