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君は、誰よりも不安定な人だった。
情緒が安定しなくなると連絡がつかなくなるような人だった。
そして返ってきたかと思うと「俺のこと好きじゃなくなった?」「俺より幸せにしてくれる人いるよ」そうやって君はよく言ってきた。
私はその度、面倒な人だと思いながら、「好きだよ」「君と幸せになりたいの」そうやって答えていた。でも私は分かっていた。
君が他の子と電話していることを。君のことを好きな子が私以外にもいることを。そして私たちの気持ちを知っていることも。
君は、世間一般でいう、どうしようもない男だった。
私が好きだと伝えても、「18歳になったらね」「遠距離になっちゃうよ」。そうやってはぐらかした。
確かに私は17歳で、君は5つ上で、私は大阪で、君は岩手で、付き合えない理由は君が言うように沢山あった。
でも、君がそう言っているのはそういうものじゃなくて、
私のことを好きじゃないから。それでも私に好きでいてほしいから。
それを私も知っていた。肉体関係のある異性がいることも、なんとなく気づいていた。
いつだったか、君の無責任さに嫌気がさして「もっと自分の言葉に責任持ちなよ」と言ったのがきっかけで、小さな喧嘩をした。
後悔はしなかった。私の言ったことは間違いではなかったから。
しばらくして、君が謝ってきた。
君は多分、モテてきたんだと思う。
147cmだった頃は分からないけれど、少なくとも私の知っている君を見ているとそう思う。
整った顔立ちに長い手脚、どうしようもない人なのは事実だけど、誰よりもお人好し。
人から好かれるには十分だった。
だからこそ君は、人の気持ちの儚さを、何度も知ってしまった。
人の好意を素直に受け取れない君が、どうしようもなく痛々しく可哀想だと思った。
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作者名:らると | 作成日時:2023年8月25日 15時