最終電車

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木曜のバレンタイン。


なんとか１６時で仕事締めて、
その足で東京に向かった。


あれから４日経って、
離れてることがこんなに苦しいて、
思い知らされた。


距離置くて、言葉の通り。


Aからの連絡はないし、
こっちからかけても、
電話には出えへんし。

ラインも未読んまま。



品川駅で、
最後の手段で、
マンションに電話かけたら、

お母さんが、

Aはまだ仕事から帰ってへん、
今日は残業で遅くなるて聞いてる、

教えてくれはった。


「ありがとうございます。
そっち、向かってみます」

電話切りかけたら、


「信五くん、Aと別れたんじゃないの？」


そう聞かれた。


あいつ、俺とは別れた、て、
お母さんに報告したんか？

血の気が引いてく。


「いえ。
プロポーズしたんですけど、
返事待ちで・・・
しばらく一人で考えたい言われてます」


「えっ・・・
プロポーズされたのに、
あの子、返事してないの？
どうして？」


「いや、それは・・・
僕の不徳のいたすところが大きいかと」


「信五くん、まさか、浮気でもしたの？」


「違いますって。
僕の日頃の態度が、
どうも色々不満なようで・・・」


「そんな。
あの子、贅沢言ってられる年でもないのに。
いいから早くお嫁にもらってやってちょうだいね。
ずっとハラハラしてきたんだから」


「そうなんですか？
僕はてっきり、
Aがおらんなってもうたら、
お母さん、寂しい思いしはるんちゃうか、て・・・」


「娘の幸せの方が大事に決まってるでしょう？」


ふふって、笑ったお母さんの声は、
優しいて。


胸がじんてした。


「なんとか許してもろて、
幸せにしたいと思います。
会社まで迎えに行ってきます」


見えへんのに、頭下げて、
人混みをくぐり抜けてく。


迷わずに、やって来た電車に飛び乗った。

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