サクマくんは食べたい

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《えとあの〜〜……Aちゃんこの方は…》

『……日雇いの人です』

「ええ…おい鹿野、」

『……日雇いの人です』

《あ、はは〜日雇いか、そうかそうか。はは、》




店長は困ったとき鼻の下をポリポリと搔く


私のパパと一緒


ここの店長はパパの弟


私の叔父さん


裏口から入って休憩室で鉢合わせた店長は私に挨拶を返したあと 綺麗なほど二度見をした


金髪の佐久間先輩を目で捉えると勢いよく立ち上がった


それでさっきの会話に戻る。




「おい鹿野あのさ」

『……今は話したくないです』

「……」

『店長、今月のシフトくださいね』

《あ、ああうん》

『じゃあ着替えてきます』




そしてようやく佐久間先輩のシャツを離した


更衣室に入ってからも先輩と店長の声は聞こえない


……はあ


声には出ない大きなため息をつく


わたし、何やってんだろ……


怖かった。


佐久間先輩に近づかれてドキドキしたり名前を呼ばれてドキドキしたり、


どこかでこの人は大丈夫かもしれないって


勝手に思ってたのかもしれない


それでも怖かった。


怖くて震えが止まらなくて一人じゃ歩けそうになかった


無理に掴んで離さないシャツに


文句すら、言葉一つなくここまで着いてきた先輩


……分からない


はあ、


今度は声になって吐き出されても


制服にはきちんと着替えられたようだ


シャーッと簡易の仕切りカーテンを開ける


………え、




『な、……何して』

「ど。似合うっしょ？」

『……』

「ノーコメントですかーー？」




目の前には見慣れたケーキ屋の制服を身に纏い


へらりと笑う佐久間先輩


丈もサイズ感もピッタリすぎて 何コレ




《先月辞めた子の制服がたまたま合ってよかったよ》

「え〜このまま俺もここでバイトしちゃおっかなあ」

《それは助かるなあ》

「あ、でも俺もうすぐ就活なんスわ」

《ガーン……それなら仕方ないよ……》




なにちょっと仲良くなってるの？


チラリともう一度、佐久間先輩を見る


……似合ってる、かも


金髪はラウくんで見慣れてるからかもだけど


いつもだるだるで気崩された学校の制服ではよく分からなかったけど


意外と細いし、肩幅せま…


"日雇いです"なんて出任せなのに


調子狂うな、




「A 写真撮ろ」

『へ、あっ いやちょ、』

「……くふふ 笑えよ」




急に、ほんと……


調子狂うんだってば









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