サクマくんは食べたい

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帰りのHR前に廊下がザワザワと騒がしい




「あ、いたいた。鹿ちゃん」

『どうしたんですか』

「昼休み俺のこと探しにきたんじゃないの？」

『え、あ …』




……それは、渡辺先輩と宮舘先輩についた咄嗟の嘘


本当は、_____




「俺今日生徒会の集まりあって。先生から頼まれたこの資料、多目的ルームの机に並べておいてくれない？」

『……はい、わかりました』

「…あとこれ。」

『……なんですか、コレ』

「ふっかからの"絶対ラーメン食べる券"だって」




あの人どんだけラーメン好きなんだろう …


じゃあよろしくねえ。と爽やか笑顔で去っていく阿部先輩にまた廊下がザワザワしだす


近くで4人グループを作るクラスメイトが《先輩とは話すんだ》《ねえ〜》なんてバッチリ聞こえる陰口


どうだっていいけど。


業務連絡のHRが終わり 託された資料を持って教室を後にする


誰もいない多目的ルームに はぁとため息


空いてる机にリュックを置いて資料を並べていく




昼休み、三年棟に向かった本当の理由は、




「鹿野」

『……え』




入口で無表情のままドアに凭れてる、


_____ 佐久間先輩に会うため




『……な、何してるんですか』

「鹿野」

『は、はい … 』

「……」

『揶揄ってます？』




入口に立つ佐久間先輩と、教室に立ち尽くす私


先輩は私の名前を呼ぶだけ


意味わかんない


手元に残った資料を再び並べる




『先輩、そこで見てるだけなら手伝ってくださいよ』

「…やだ」

『じゃあ帰ってください』

「それはもっとやだ」

『……佐久っ』




_____ 身体がピクリと跳ね 動けなくなる


こんなに遠いのに佐久間先輩に心臓の音が聞こえちゃうんじゃないかって、




「A」




突然、そう呼ばれた


私の声と重なったのに、しっかり聞こえた


……顔があげられない




「それ終わったら帰ろ？」

『……やめて、ください』

「……なに？」

『……私のこと、揶揄うの…やめてください、』




声も手も足も心臓も震えてる


これ以上、引っ掻き回されると、越えたくない線を越えそうで怖い




「…ならさ、嫌いって言えよ」

『っ、』

「引っ叩くでも無視でもしろよ」




ポスっと包み込まれる暖かい感覚


キンモクセイの香りを覚えている




『、だったら…嫌いに、させてくださいよっ、』

「……それ反則だろ」




ふっと笑う佐久間先輩の声が降ってくる


煩い心臓は止まりそうもない









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