サクマくんは食べたい

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「道案内して？」と隣を歩く佐久間先輩


ちょっかい出すこともべらべらお喋りすることもない


絶対しんどいんだよ …


本当、馬鹿なんですか …… ？


さっきから 呼吸が荒くなってるの 気づいてる？




「…見すぎ」

『え、いや別に見てなんか』

「……手繋ご」

『え、え、ちょっ』

「……恋人つなぎ …へへっ」




キュン。


……なんかしてる場合でも状況でもないのに


手首を掴まれていたときより 体温が伝わって熱い




『先輩 … 帰り一人ですよ？』

「そだね」

『倒、れたら … どうするんですか』

「…ね」

『ね。じゃなくて … 』

「鹿野はさ … どうして俺の心配ばっか、すんの？」

『え … そりゃ、先輩は病人で』

「鹿野は女の子だろ。」




声の低くなった佐久間先輩は ピタリと足を止めて


空を見上げる


今日の空は 星がいっぱい敷き詰めてある




「……襲われるでしょ。」

『そんな物好きいません …』

「俺みたいに … 物好きがいるかもよ？」

『……し、知りませんよ、』

「…あ、流れ星……」

『嘘、』

「嘘。」




行こ。ってまた歩き出す


こうして歩いてみると 案外先輩の家と近いことが分かった


近所の交差点が見える


ここを越えたら もう目の前は我が家だ




『ここで、大丈夫です』

「…さみしい」

『……』

「……そんなかわいい顔すんなよ。…触りたくなる」

『、っ……… お大事に』

「うん……さんきゅ」




青信号になって するりと手は解ける


…… まだ温かい


横断歩道を渡って 振り向いたら


佐久間先輩はまだこちらを向いて立っていて


ヒラヒラと手を振ってくる


…… 振り返すべきだろうか、


迷っていると 先輩は力なく踵を翻して来た道を戻っていく


……


来る者拒まず、去るもの追わず ……


佐久間先輩の通り名が頭を過ぎる


まあ、来たのは佐久間先輩のほうだけど


……ああもう、なんで、先輩になんか、


ポケットからスマホを取り出し メール画面を開く


" ユキちゃん、お願いがあるんだけど "








「………… もしもし？」

『……鹿野です。』

「……え」

『ユキちゃんに聞きました … 佐久間先輩が、帰りつくまで …… 電話繋いどきます』




急いで家に戻って 勇気を出して伝えたのに 一向に返事はなくて


ちょっとだけ心配になる




『……せんぱい？ …生きてますか、』




部屋の掛け時計の秒針が一周する




「…ごめん、好きだわ」









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