サクマくんは食べたい

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マンションの8階


インタホーンを押して 暫くして雑音が聞こえる


「はい……」と聞こえてきた声は濁点がいっぱいついていて 佐久間先輩なのかも定かではなさそう



「目黒だけど。……佐久間くん？」




扉の奥から徐々に近づいてくる足音に少し緊張する


カチャリ……鍵が外され 扉が開かれる


蓮くんの大きな背中で よく見えない




「……佐久間くん しんどそうっスね？」

「寒くて死にそう……」



コレ。と蓮くんがスーパーの袋を渡す


ひょっこりとユキちゃんも顔を出して《さっくんお見舞いだよ》と。




「サンキュ……目黒姉弟の優しさが沁みるゼ……」

《風邪引いてても通常運転なんだね》

「いやギア ボロっボロだわ……」

「……上がんないほうが良さそう？」

「……まあ。移しちゃやべぇし、帰っ……ハ？」




今まで盾みたいに目の前にいた蓮くんがスっと横にズレるから


私と佐久間先輩は初めましてをする


かわいい女の子がプリントされた上下スウェットにセットされていないぺたんこの髪の毛


まだ熱があるのか 顔は赤く本当にキツそうだ、




「ハ……え、……何して」

「3人でお見舞い」

《さっくん元気なさそうだったし Aちゃんの顔でも見たら 風邪治るかなあ〜って》

『……ど、どうも』

「……うわ待って…恥ず……」




ポカンとしていた佐久間先輩は急に慌てだして「着替えてくる」と言い出す


「佐久間くんって可愛いよね」と蓮くんの楽しそうな声が降ってくる


結局、3人とも部屋に上げてもらい 佐久間先輩は無地のスウェットに着替えてきた




「佐久間くん 別に寝てていいのに」

「さっきまで寝てたから 眠くねえし……」




チラリと目が合う


……熱のせいだか 妙に艶っぽくて


またドクンと心臓が跳ねる




《そうださっくん！Aちゃんがはちみつレモン作ってくれるから》

「まじ……？」

『あ……うちのお店で出してるのと同じので良ければ』

「ふうん……」




無表情、と思えば




「……嬉しい、」




キュウンと眉を下げて へへっ と笑う


……何コレ、何コレ、何コレ…………


佐久間先輩のお母さんは料理が好きな人なんだろう


キッチンは整理整頓されていて すごく綺麗だ


使い勝手も良い


分量はお店と同じだから 味は多分間違いないだろう


……と、




『わ、』

「……」

『あ、の……佐久間先輩っ、』

「……」




背後からお腹に腕が回って


レモンを切る手を止めた









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