レトルト ―病室の― ページ45
あのときの恋は、初恋だ。
俺は小さい頃から体が弱く、入院ばかり。
・・そんなときだった。彼女と出会ったのは。
―――
ある春の日。もう、桜が満開になってもおかしくない。
隣に入院してきたのは小柄で華奢な女の子だった。
別段、俺は女の子に興味はなかった。
『ねー、あなたの名前は？』
ふと、そんな質問。
「・・・香坂」
俺が名乗ったのは苗字だけ。
『香坂くん！わぁ、カッコいい名前だね！』
可憐に微笑む彼女は、咲き誇る桜かのように美しかった。
―――
俺は、にこやかに微笑む彼女にいつの間にか惹かれていた。彼女の名はA。
いつも、笑顔で弱さは誰にも見せなかった。
『ねーねー、レトくん！』
いつも、元気な彼女の容態が変わったのはとある夏の日。
『・・・どうしよう。』
いつもと違うAちゃんの声。
「・・大丈夫？」
『・・あ、ごめんね！なんでもないよ！』
Aちゃんは必死に悩んでいたのを否定した。
・・このとき俺が気付いていれば。
『レトくん・・って好きな子とかいるのー？』
ふと、そんなことを聞かれた。
君や、なんて言えるはずもなく喉まで出かけた言葉をそっと胸にしまう。
「・・別に、おらんけど」
少し悲しそうな顔を浮かべる彼女。
なんで、そんな顔・・、するの・・？
『・・そっかぁ！レトくんいるのかと思ってた』
「Aちゃんは？いるんか？好きな人」
・・少し間をあけて。
『・・私はいるよ、好きな人』
頬を少し染めながら、放たれたそんな言葉。
・・俺はそれから、彼女とあまり喋らなくなった。
『レトく―――ん！』
「・・・なんや？」
彼女が好きなのはきっと、いつもお見舞いに来るあの男の子。
俺は笑顔で話しかける彼女に冷たい態度や素っ気ない態度をとった。
『・・レトくん！なんかあった？話なら聞くよ？』
「五月蝿いねん！お前！いい加減にせえや！人の気も知らんで！」
『・・・ご、ごめん。』
―――
俺がある朝目覚めると、隣に彼女はいなくて。
いつもの
『レトくん！おはよー！』
そんな元気な声は聞こえなくて。
看護師さんに聞くと、彼女は急に容態が悪化したらしい。
・・今夜がヤマらしい。
あ、いやだ・・いやだ・・俺のせいだ。きっと、俺があんなこと・・。
・・俺の頬には、涙が伝っていて。
―――
＊
続きます
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まい(プロフ) - へへへぇってなります！頑張ってください！ (2017年3月31日 0時) (
レス) id: 8365df7f18 (このIDを非表示/違反報告)
あるみ＠(プロフ) - メルバさん» 分かりました！コメントありがとうございます！ (2016年9月19日 15時) (レス) id: 819da7e4ce (このIDを非表示/違反報告)
メルバ - 私も、某廃人さんの話見たいです…！初コメ失礼しました！ (2016年9月19日 15時) (レス) id: 88af434ee4 (このIDを非表示/違反報告)
あるみ＠(プロフ) - simezi2♯ミッフィー。さん» コメントありがとうございます！私は書きたいとは思うのですが・・。不快に思う方もいるかもですしね・・迷います・・。 (2016年9月14日 21時) (レス) id: 1b6a5f756d (このIDを非表示/違反報告)
simezi2♯ミッフィー。(プロフ) - コメ失礼します〜。あるみさんの小説をいつも拝見させて頂いてます！前作の方から見ているので毎回更新が楽しみであります！個人的にですが、某廃人さんの小説を見たいと思っております。最終的にはあるみさんが決めるので私はどっちでもいいですね！ (2016年9月14日 21時) (レス) id: 99e2b92fd1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あるみ＠ | 作成日時：2016年9月11日 22時
