10 ページ11
渡り廊下を足早に急ぐ。
外を見ると、もう空は夜の香りをまといつつも、茜と金を流し込んだように色づいていた。
綺麗。
眩しさに目を細めつつ、単純にそう感じてしまう。
城下に見える珍妙としか言いようがない建造物の数々が無かったら、綺麗どころか絶景だったのに。
それにしても、タイムロスを埋める為に仕事に勤しんでいたから気づかなかったのだが、もうこんな時間帯になっていたのか。
本当に、とんだ邪魔が入ってしまった。
まったく、あの妖怪ハイウエストめ。
戦術を教えてくれるのはいい。
ヒラにも「護身はできるようにしといて、心配だから」と言われている。
が、何でこの早く仕事を終わらせようとしている時にやってくるのだ。
村を見てくるのではなかったのか。
タイミングが悪すぎる。
それに教わるのだったらフジでもよかっただろう。
柔道とか言う武術に長けていたはずだ。
私は例外かもしれないが、基本幹部は戦闘員でもあるから、強いのだし。
結局、必死の抵抗も無駄足で、引きずられていってしまったのだが。
だから本当に急がなくてはいけない。
少々止まっていてしまった足を、再び早める。
大きくなった足音が、廊下に響いた。
フジの部屋はこの階段を降りた階にある。
あと少し、あと少しだ。
頼まれた仕事は大変だったが、喜んでもらえるなら、頑張ったかいがあるという物だ。
自然と降りる音も軽やかなものなる。
しかし、残り数段にさしかかった所だった。
『あっ』
踵が階段のふちから滑り落ちる。
不意に体が空気に包まれ、自分の体勢が崩れるのが分かった。
注意散漫になっていたせいだ、みっともない。
こう自分を責めてみるがもう遅い。
胃がひっくり返ったような錯覚に陥る。
まずい。
とっさに固く目をつぶる。
受身の体制をとり、衝撃に備えた。
が、
うっすらと目を開ける。
想像していた痛みはそこにはなかった。
「大丈夫なｎ・・・大丈夫ですか？」
衝撃を受けるはずだった体は、しっかりとその腕に支えられている。
服を通してもなお、自分以外の体温が感じられ、ただひたすら気恥ずかしさに熱さを感じる。
顔に落ちる影が、距離の近さを感じさせた。
『っ・・・大、丈夫です・・・』
しばらくの沈黙の後、彼女はようやく搾り出したように答えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 231人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チェリー☆拓郎(プロフ) - 響也さん» まず。私的にはヒジキと我々だ！がクロスオーバーしてる時点ですっごくテンションあがります！！自分では書けないので...とってもありがたいです！！ (2017年11月17日 23時) (
レス) id: ad3a02f993 (このIDを非表示/違反報告)
響也(プロフ) - チェリー☆拓郎さん» 本当ですか！？そう言っていただけて嬉しいです、ありがとうございます。もう少し更新速度を早められるよう頑張りたいと思います！ (2017年11月17日 20時) (レス) id: ba07296d20 (このIDを非表示/違反報告)
チェリー☆拓郎(プロフ) - この作品大好きです！！ここれからも更新頑張ってください！！！ (2017年11月17日 9時) (レス) id: ad3a02f993 (このIDを非表示/違反報告)
響也(プロフ) - 清香-きよか-@リツさん» 更新に関しては、マジでごめん。いやあ短編集書くのって楽しいっすね(満面の笑み)・・・はい、ちゃんと更新します。 (2017年9月10日 23時) (レス) id: 64be460f0d (このIDを非表示/違反報告)
清香-きよか-@リツ(プロフ) - 更新どうしたんですかコラ。「8月終わったから更新しなきゃな〜」って言ってたじゃないですか。はやく更新しないとお前をVIPルームに突っ込んで私と大先生の反復横飛び目の前で見せるぞ(更新ゆっくりでいいので待ってます。頑張ってください^^) (2017年9月10日 23時) (レス) id: 133be5b033 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：響也 | 作成日時：2017年8月3日 1時
