水の鏡面【クー・フーリン(オルタ)】 (ページ3)

今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:17,887 hit

Prolog ⅱ ページ3

「こっ声、聞こえない！？」
「声ですか？聞こえませんよ」
そう言ったマシュに唖然としていると、また声が響いた。
『貴女が望むのであらば、叶えましょうとも。それが如何なるものであろうと』
息を飲むと、ドクター達の方から声が上がった。
「り、立香ちゃん。違和感の全貌がわかったよ！」
「本当！？」
私とマシュは目を合わせて、ドクターの前のモニターに駆け寄った。

史上の天国、或いは、故郷のような。

"その世界"を見て、私達はきっとそんなことを思っただろう。
恐らく水であろう液体が流れる。
その上に、桜が幾本も咲き誇っている。
一見懐かしく感じたそこも、もう一度見るとその異質さ、有り得なさなどが浮かんでいく。

まるで、
「マーリンの宝具みたいな...」
ボソリと呟いた言葉に、返す言葉があった。
「これは、私よりもタチが悪いものだよ」
ぬ、と後ろに現れたのは、件のマーリンだった。
「『あのクズの』マーリンよりタチが悪いって...」
「マイロード...中々私のこと嫌いだね？」
「嫌いって言うか、...クズだから？」
「うーん、マイロードながら毒舌が過ぎる」
マーリンはフッと笑って、モニターを見る私の目を塞いだ。
「おいコラ、マーリン！！」
私の怒号にも笑って、10秒ほどそのまま塞いでいた。
そしてぱっ、と離した。
マーリンを睨みつつ前を向くと、さっきの景色とは違って見えた。

桜が、無い。
代わりにあるのは、─────────────。

「うっ...」
吐き気が込み上げてくる。それでも目が離せなかった。
パチン、と指と鳴らす音が聞こえて瞬きをすると、その景色は消えた。
「ね？分かっただろう?」
「...確かに、ね」
「先輩、大丈夫ですか？」
「ん、だいじょーぶ」
マシュに寄りかかると、あわわ、と言う感じで慌てて支えた。マシュに癒されるわ。
「...マーリン、あれが、何時も見えるの」
「───────」
無言は肯定。いや、彼の場合は、微笑み、なのだろうけど。
「立香ちゃん、行けるかい？」
ドクターは心配そうに見て聞いた。多分、私が行きたくないといえば、ドクターは行かせない。
でも、
『長いですよぉ。もう！』
「...！」
ぺちり、と頬を叩かれたような感覚がした。
思わず見ると、ベールを被った女の子がいた。
『早くきてくださいよぉ』
ぐすり、と涙目で私を見る彼女は、5歳もいかないような見た目だった。
『早くぅ』

☆貶しに貶してますが、決してマーリン嫌いなわけじゃないですので。