Prolog �� ページ5
見るとタニキが、歌声の方に向かっていた。
エミヤは、私とマシュに強化の魔法を何重にかけたらしい。ありがたやー。
「オルタ！！」
エミヤが叫ぶと、タニキは着地して歌声を途切れさせた。
「ひゃ！？」
ソプラノの綺麗な声の悲鳴が聞こえた。
ガヂャン！！！！と耳を劈くような硝子が割れるような音。
ヘラクレスは私とマシュをエミヤと一緒に硝子の上に引き上げた。ふらふらと足元が覚束無い。
「目眩がするぅ...」
「だっ大丈夫ですか！？」
駆け寄る足音が聞こえて見てみる。
言葉を失った。
「えっと、あの」
心配そうにこちらを見る彼女は、白銀に近い色の髪を揺らして私を見た。
髪の間に隠れた顔に収まった、
「マスター、大丈夫ですか？」
「へっ！？」
彼女に見惚れていると、マシュが声を掛けてきてびっくりしてしまった。
「...痛くない？」
彼女は、私の頬に優しく触れた。その指は、冷たかった。
「えっ、あっ、ありがとうございます！？」
「マスター！？」
「落ち着きたまえ。支離死滅な言動になっている」
エミヤがコツン、と頭を叩くと少し落ち着いた。
「あの、ここって」
「特異点、って言うのかな。本来なら有り得ない世界だと思うよ」
「ゑ」
「マスター、違います！それはワ行のえ、ですよ!?」
「君もさては、混乱しているな!?...マシュ、マスターと休んでくるといい」
「はっはい、では失礼します」
マシュは私の背中に手を当てて、先へ促した。
『こっち』
『こっちだよぉ』
袖をくい、と両側から引っ張られる。ひっ、と声を漏らして見ると、10歳位の女の子と男の子がいた。
その子たちもまぁまぁ、いや、滅茶苦茶美形の顔立ち。
「ファッ!?」
「イヴ、アダーモ。困らせたらダメだよ」
『はぁーい、お母さん』
『うん、おかあさん』
とてて、と両側から前に引っ張られる。
「ま、待ってよぉ！」
「マスター、待ってください！」
ドタバタとその世界を走っていく。
「ここら辺でいいかな」
「うんうん、良いと思う」
「そうだね」
「ねー」
「でも、おかあさんって恥ずかしくない？」
「正直、恥ずかしいけどね...。彼女だから仕方がない」
「ねー」
「星見の魔術師が来るなんてびっくり」
「ねー」
「やっぱり彼女の顔に圧倒されちゃうよね」
「わかるぅー」
「気づいてくれるかな」
「わかんないや」
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作者名：瑠璃 | 作成日時：2019年11月3日 11時
