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結局のこのこと訪れてしまった花見は予想通り居心地のいい場所ではなかった。慎太郎は彼女と一緒に輪の中心に居るし、浮かれて持ってきた本はトートバッグの底で行き場を失って静かに眠ってる。
でも、そんな中一つだけ救いだったのは、ぼっち仲間と言ったら怒られそうだけど私と同じくつまらなそうに人の輪を眺める人を発見したことだった。
｢やっほー松村くん｣
｢あ、上原さん来てたんだ｣
｢来ないと思った？｣
｢忘年会途中で帰ってたし｣
｢てか私は松村くんがいる方が不思議｣
｢慎太郎に無理やり連れてこられた｣
誘ったの私だけじゃなかったんだって、男の子相手にまで妬くなんてどうかしてる。彼女持ちの人を好きになるだけで報われないのに馬鹿みたいだ。
｢楽しい？｣
｢そっちは？｣
｢ぼちぼち｣
｢俺もそんなとこ｣
お互い友達居ないねーって、盛り上がりには欠ける話題だけどひとりで居るよりずっと良かった。暗いやつ、そう周囲から思われるのが怖かった。
｢研究テーマ決めた？｣
｢俺は人間失格かな｣
｢私、人間失格かヴィヨンの妻で迷ってるんよね｣
｢お互い太宰か｣
この調子だと前期のグループ発表のチームは一緒になりそうだね、なんて話していればあの2人のこと思い出す。これからは2人が一緒にいるところを直視しないといけないんだ。
｢そう言えば慎太郎と有美も太宰らしいよ｣
｢知ってる｣
｢なんか羨ましいよね｣
｢…俺は無理だわ。偶然ならまだしも慎太郎に合わせてんだろ？女子のそう言うとこ引く｣
女子。そう一括りに詰られて心臓が抉れた。好きな人と一緒に居れたら嬉しいじゃん、なんて言い返すことも出来ず曖昧に笑う。
この花見も慎太郎が居るから来た。そんな自分が惨めで、満開の桜が疎ましく思えた。
｢…上原さん？｣
｢あ、ごめん。ぼーっとした｣
｢何か顔色悪くない？｣
｢んー、眠いだけかも｣
昨日レポート夜中までやってて、って嘘。ただ自分の浅ましさを改めて突きつけられてしんどくなっただけ。
｢今日は帰ろかな｣
｢え、大丈夫？｣
心配してくれる松村くんには悪気はなかったんだと思う。彼は私が傷付いていることにすらきっと気付いていない。
｢大丈夫よ。家近いし｣
｢でも、｣
｢俺が送ってくよ｣
松村くんが何かを言いかけたところに割って入ったのは、いつの間にか人の輪を抜けてきた彼だった。戸惑ったような松村くんに、お腹の底がぎゅっとした。
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sail(プロフ) - 七七盛さん» コメントありがとうございます。大学生感が伝わっているの、とっても嬉しいです😌最後までよろしくお願いします🙇♂️ (2022年1月31日 9時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
七七盛(プロフ) - 自然でテンポのいい会話にぐわっと吸い込まれる作品で、きゅんと癒しを作品からもらっております。季節の空気感とか大学生特有の感覚とかに引き込まれてとてもわくわく読ませていただいております。これからの展開を楽しみにしています。 (2022年1月22日 2時) (レス) id: 3ec5ecab0a (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - pq__mlさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。最後までお付き合いいただければ幸いです😌 (2021年12月9日 20時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
pq__ml(プロフ) - はじめまして。太宰治の斜陽、大好きなのでとても嬉しいです。楽しみにしております。 (2021年11月29日 5時) (レス) id: d249f25be0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2021年11月10日 15時
