ep.7 人はそれを革命と呼ぶ ページ31
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｢来ないかと思った｣
｢まあ行く気なかったしね｣
｢じゃあ何でここにいんの？｣
師走の東京駅は人が多くて参ってしまう。それでも私はここに来なくては行けなかった。私は革命に生きることを決めたから。
｢私、大我先輩とは行けない｣
｢好きな人と上手くいったんだ？｣
｢ううん｣
｢じゃあ俺で良くない？｣
｢んー、それじゃ駄目なの｣
松村くんから電話をもらった夜、私の家のインターホンを鳴らしたのは慎太郎だった。やっぱり彼は彼女と別れたことをおくびにも出さずに私にキスをした。その瞬間にきっと心は決まった。
｢ちゃんと振り向かせることにしたの｣
｢そいつ、一筋縄じゃいかないと思うけど？｣
｢分かってるよ。…でも、今度は頑張るって決めたから｣
私の初めての恋は大我先輩だったんだと思う。お酒も煙草も私に教えてくれたのは大我先輩で、近過ぎる距離にあれが恋だったかどうか私は分からなくなってんだと思う。
だから大我先輩が離れていった時もそんなもんかって受け入れた。本当は辛くて悲しくてどうにかなりそうだったのに、見ないふりしてその感情には蓋をした。そして私は、2回目の恋をした。
それは恋と言うには衝撃的で複雑で、時には自分を嫌いになったり許したり忙しいけど、人は恋のためにしか生きられないって思い知ったの。
愛じゃなくて、恋なんだ。
｢大我先輩のこと…たぶん好きだったよ｣
｢今更言うのはずるくない？｣
｢お返しだよ｣
あの時私を置いていったことへのお返し。もしあの時、大我先輩が私の手を握ってくれてたら……なんて、考えても仕方ないか。
｢じゃあ…俺、行くよ｣
｢…うん｣
｢元気でね｣
｢大我先輩も……｣
涙は出なかった。そして、やっぱり大我先輩への恋は終わった恋なんだって思い知らされた。
見慣れた後ろ姿を見つめることはもうない。もしいつかあなたに会う日が来るならば、幸せになったよって言えるといいな。
｢さよなら……大我先輩｣
呟いた声は人混みに掻き消された。きっともう誰にも届くこともない。それでもあなたに出会えて良かったと私は思ってるよ。
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sail(プロフ) - 七七盛さん» コメントありがとうございます。大学生感が伝わっているの、とっても嬉しいです😌最後までよろしくお願いします🙇♂️ (2022年1月31日 9時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
七七盛(プロフ) - 自然でテンポのいい会話にぐわっと吸い込まれる作品で、きゅんと癒しを作品からもらっております。季節の空気感とか大学生特有の感覚とかに引き込まれてとてもわくわく読ませていただいております。これからの展開を楽しみにしています。 (2022年1月22日 2時) (レス) id: 3ec5ecab0a (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - pq__mlさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。最後までお付き合いいただければ幸いです😌 (2021年12月9日 20時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
pq__ml(プロフ) - はじめまして。太宰治の斜陽、大好きなのでとても嬉しいです。楽しみにしております。 (2021年11月29日 5時) (レス) id: d249f25be0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2021年11月10日 15時
