▽ ページ28
.
大我先輩からの誘いを3回連続で断ったら、何かあったのってLINEが来た。それにすらなんて答えればいいか分からなくて無視してたら、今度は電話がかかって来た。
今から行くからって問答無用に言い放たれて、こんな夜中にインターホンがなる。電車なんかない時間なのにタクシーで来くるなんて馬鹿みたい。なんで、私にこだわるの。
｢痩せた？｣
｢別に……そうでもないですよ｣
｢じゃあ何でそんな顔してんの｣
｢何で、かなぁ……｣
私、今酷い顔してる。それは分かってた。シャワーを浴びてたら不意に泣けてきてボロボロと涙を零したのは1時間前。まだ目は赤い。
｢用事あるって言ったのは嘘？｣
｢…嘘じゃないよ｣
｢ならその用事がAをこうしてるの？｣
｢…違う。違うの｣
私が全部悪いのだ。
大我先輩に連絡が出来なかったのは誤魔化せる自信がなかったから。言葉を交わしてしまえば今みたいに暴かれるのが分かってたから。
学校が始まってからも慎太郎との関係は続いてて、｢行っていい？｣って言われてしまえば断ることは出来なかった。飲みに誘われたらいつでも行ったし、ホテルに誘われたら素直に頷いた。
求められることが嬉しくて、逆に見向きもされなくなるのが怖かった。だから不意に泣きたくなるのもそのせい。
大我先輩のことは、先輩のことを気にしていた慎太郎に大我先輩との仲を勘繰られたくなかった。だってそのまま、はい終わりってなってしまうのが怖かった。
｢俺はこれでもAのこと大事にしてんだよ｣
｢嘘だよ…大我先輩、恋人居るでしょう？｣
｢恋人……うん。俺はそう思いたかったけど、実際は手を触れたこともない高嶺の花は居たね｣
私から遠ざけなのに、何でそんなに優しい手で私に触れるのかが不思議でならなかった。自分の恋のために、私は大我先輩のこと蔑ろにしてたんだよ。なのに、何で。
｢居た……？どういうこと……？｣
｢彼女の旦那の愚痴聞いてて…それだけでもいいって思えたんだよ、初めは。だけど……俺が本当に守りたいのは誰かって考えたら彼女じゃなかった｣
｢………やだ、やめて｣
｢俺にとって大事なのは……いや、違うね。俺が、愛してるのは……Aだよ｣
そう言った大我先輩の照れくさそうな顔は愛おしいのに。この手を握るべきだって言うのは分かってるのに。
｢俺と、一緒に来て欲しい｣
今まここで浮かぶのは慎太郎の顔だけだなんて、馬鹿みたい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1255人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sail(プロフ) - 七七盛さん» コメントありがとうございます。大学生感が伝わっているの、とっても嬉しいです😌最後までよろしくお願いします🙇♂️ (2022年1月31日 9時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
七七盛(プロフ) - 自然でテンポのいい会話にぐわっと吸い込まれる作品で、きゅんと癒しを作品からもらっております。季節の空気感とか大学生特有の感覚とかに引き込まれてとてもわくわく読ませていただいております。これからの展開を楽しみにしています。 (2022年1月22日 2時) (レス) id: 3ec5ecab0a (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - pq__mlさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。最後までお付き合いいただければ幸いです😌 (2021年12月9日 20時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
pq__ml(プロフ) - はじめまして。太宰治の斜陽、大好きなのでとても嬉しいです。楽しみにしております。 (2021年11月29日 5時) (レス) id: d249f25be0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2021年11月10日 15時
