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「ハンカチ」
「……イケメンかよ」
「いつもとキャラ違くない?」
「多分……こっちが本物」
瞬きじゃ蒸発しきれなかった涙を強引に拭ったら、黒くてフワフワのハンカチを手渡された。…私より女子力高いじゃん。
「…いつから気づいたの?」
「先月…くらいかな」
「顔に出てた?」
「なんつーか……出てたけど、多分俺しか気づいてねーよ」
松村くんは機嫌を取るために嘘を付く人じゃない。安心して出たため息はきっとさっきよりは軽かった。
誰にも言うつもりのなかった片思いは、自分の想像以上にしんどいものだったんだと思う。バレたくなかったはずなのに、今は安堵の方がずっと大きい。
「俺は……その、応援…してるから」
「気とか使わなくていーよ」
「いや……そう言うのじゃなくて、俺は上原さんが良い人だって知ってるから。…だから、慎太郎の相手は上原さんがいいって言うか」
いつもは口数が少ない松村くんは今日は饒舌だった。私も松村くんもいつもと少しだけ違くて、その雰囲気が口を軽くする。
秘密を共有することは、男女の仲を深くすることと同じ。松村くんはもうただの同期じゃなくて、恋の共犯者なのだ。
「俺、入学当初に有美と付き合ってたんだよね」
「それ……慎太郎は」
「知らないで付き合ったんじゃないかな」
「そっか……」
松村くんの告白を聞いて納得した。2人を見た時に微妙な顔をしていたのはこのせいだったんだ。
「有美も…悪いやつじゃねーんだけど、別れてから何度か飲みに誘われて……ホイホイ着いて行った俺も悪いんだけど、その…有美の家泊まったりした」
「それは……」
「俺が慎太郎と知り合う前だけど、多分あいつら付き合ってた」
有美はきっと浮気だなんて思ってない。友達と飲んで家に泊まらせただけ。でも、そういうことが普通で出来ちゃう子。でも、自分は束縛が激しくて相手の交友関係に口を出したりする。
松村くんに聞いたことはぐちゃぐちゃと難しくて私を混乱させた。じゃあ私はどうすればいいんだろうか。慎太郎の相手に欠点があるから気兼ねなく奪っていい?
たぶん、そんなに簡単なことじゃない。
「だから、つったらなんだけど…俺は有美より上原さんを応援するよ」
「……難しいね」
「また嫌な気にさせてたらごめん」
「そんなこと…ないよ」
いい子ちゃんぶっても内心でほくそ笑んでる自分が居ることには気付いている。私の中の蝮が、大きく舌なめずりをするのを感じた。
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sail(プロフ) - 七七盛さん» コメントありがとうございます。大学生感が伝わっているの、とっても嬉しいです😌最後までよろしくお願いします🙇♂️ (2022年1月31日 9時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
七七盛(プロフ) - 自然でテンポのいい会話にぐわっと吸い込まれる作品で、きゅんと癒しを作品からもらっております。季節の空気感とか大学生特有の感覚とかに引き込まれてとてもわくわく読ませていただいております。これからの展開を楽しみにしています。 (2022年1月22日 2時) (レス) id: 3ec5ecab0a (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - pq__mlさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。最後までお付き合いいただければ幸いです😌 (2021年12月9日 20時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
pq__ml(プロフ) - はじめまして。太宰治の斜陽、大好きなのでとても嬉しいです。楽しみにしております。 (2021年11月29日 5時) (レス) id: d249f25be0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sail | 作者ホームページ:http://ma-no homepage
作成日時:2021年11月10日 15時