ベイビー・ラブ (ページ38)

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マキちゃんの言ったことは、半分当たってて半分外れていた。

樹先輩から、誕生日の日を指定されて出掛けよって言われたけど、特に誕生日だよね？とは打診されなかった。

だから樹先輩は私の誕生日を知っててそこを選んだのか、それともただそこが空いてるから選んだのかは定かではない。

｢A、これ売り場持って行って｣

｢あ、はーい｣

｢何その顔｣

｢普通にパシるな～って｣

｢いや俺がお前の先輩なんだからいーだろ｣

北斗先輩とは、仲直りが出来た。いや、仲直りというか元通りになれたって言う方が正しいかもしれない。

こないだ変な感じになっちゃったけど、次に会った時の北斗先輩は通常モードだった。出会った時と変わらない、無愛想だけど面倒見がいいお兄ちゃん。

｢私もーすぐ誕生日なんで優しくした方がいいですよ｣

｢へえ、いつ？｣

｢来週の火曜日｣

｢ふーん｣

自分で聞いたくせに、めちゃくちゃ興味なさそうな北斗先輩。何ですかもう！って私が突っ込んで、北斗先輩が適当に私をあしらうの図が今日も完成してしまう。

あーあ、北斗先輩にはこんなに簡単に誕生日が言えるのにな。どうして樹先輩には言えないんだろう。

昔マンガで読んだけど、好きな人を前にすると自分の本当の気持ちを上手く言えなくなるって本当だったんだ。

｢早く持ってって｣

｢人使い荒いなぁ｣

｢お前は先輩ももう少し敬え｣

｢えー｣

｢えー、じゃねぇ｣

樹先輩の事を考えて適当な返事をしてたら、北斗先輩が目をバキバキにさせながら口だけでニコッと微笑んだ。

ヤバいヤバい、そろそろ北斗先輩が怒られちゃう。てかもういつもだったらデコピンされてる。

逃げよう、と思ってそっと北斗先輩を伺った。どれ持ってくんですかって先輩を見れば、手を伸ばしかけてたのをぐっと堪えたような先輩が目に入る。

いつも通りのはずの北斗先輩がたまにする変な顔。困ってるような、迷ってるような顔。触れちゃいけないような、表情。

｢北斗先輩……？｣

｢あー……、これ持って行って｣

｢わかりました……？｣

｢…おう｣

北斗先輩は変わらないって言った。
ずっと北斗先輩は北斗先輩のままだって言った。

でも先輩は、時々いつも通りじゃなくなる。