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「なあに痴話喧嘩?」
「斎藤さん………」
今日のシフトは私と北斗先輩と斎藤さん。北斗先輩とは全然口を聞いてないから、きっと斎藤さんが言ってるのはそれのこと。
「痴話喧嘩とかではないです」
「え、違うの」
「だって私別に北斗先輩と付き合ってないですし……」
痴話喧嘩っておかしくないですかって言えば、付き合ってないの?!って大きな瞳をまん丸に開いて斎藤さんが言うから私の方が驚いた。まだその勘違い続いてたんだって。
「私、彼氏居ますよ?」
「松村くんじゃなくて?」
「そうですよ?」
だから本当に違うんですって言えば、斎藤さんはまだ信じられないって顔で私を見る。飲み会で誤解は解けたはずなのに何でだろう。
だから、逆に何でそこまで私と北斗先輩が付き合ってるって思うのか気になった。何でですかって聞いた私に、斎藤さんが話してくれたのは飲み会で私が記憶を無くしていた時の話。
「間違えてお酒飲んで酔っちゃったのは覚える?」
「それは……なんとなく」
「そしたら松村くん焦って南野ちゃん抱き上げて外連れてってね、そのまま君たち戻って来なかったの」
もちろん松村くんからは南野ちゃんを帰しましたって連絡貰ってけど、それは松村くんが送ったと思うじゃないって。
「松村くんに何も言われてないの?」
「……何も」
北斗先輩が私を外に連れ出してくれたなんて初めての知った。
「そっかぁ………それはそれはだねぇ」
斎藤さんは何とも言えない顔でうんうんと頷く。え、何?その表情は何なんですか……?
「まあ、南野ちゃんは悪くないとして、…松村くんは心中穏やかではないかもね?」
「それはどういう……?」
「ま、所謂三角関係ってやつなんじゃない?」
斎藤さんから繰り出されるウインクに、一瞬思考が停止してしまったけど慌てて首を振った。
だってないない。北斗先輩、私が樹先輩が上手くいくような色々してくれたし。
「有り得ないですよ〜…」
「そ?」
「はい、絶対に」
「じゃあまだ観察必須ってわけね」
顎に手を当てるのも絵になる斎藤さん。不意に視線を上げた斎藤さんが私の髪に触って、結んでないの珍しいねって言う。
「北斗先輩に取られちゃって」
「へえ?」
「暑いんですよ〜」
下ろされた髪をいつも結んでいる位置に上げたら、斎藤さんはくすりと笑った。
「松村くんが不機嫌な理由わかった」
「え、何ですか?」
「トイレでここ、確認してみて」
トンと、指された斎藤さんの綺麗な首筋。
私は促されるままに、レジからでてトイレに向かった。
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作者名:sail | 作者ホームページ:http://ma-no homepage
作成日時:2021年2月4日 17時