ベイビー・ラブ (ページ30)

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◎ ページ30

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どーにかこーにか斎藤さんの誤解は解けた…(と思いたい)ので色んな人たちとお話を楽しんだ。

シフトがあんまり被ったことがない人ともお話できて嬉しい半面ちょっと気疲れもして、そっと壁際の最初の席に戻れば丁度お手洗いから戻ってきた北斗先輩が私の隣に座った。

｢疲れた？｣

｢ちょっと｣

｢何でこっち見ないの｣

｢だ、だって……！｣

だってねぇ、北斗先輩と付き合ってるって誤解されてたんだよ？ちょっと恥ずかしいでしょうが！って思う。だからぷいっと余計顔を背けたら、照れてんだ？って北斗先輩が覗き込んでくるから顔が熱くなる。

｢照れてないし｣

｢へえ？｣

｢てか近い！北斗先輩酔ってます……｣

｢お前だっていつも近いじゃん｣

｢そんなこと……｣

ないって言葉は声に出す前に飲み込んでしまった。だって北斗先輩の頭がこてんと肩に置かれたから。

いつもだったらこんなの全然ドキドキしないのに。お酒を飲んだ北斗先輩が独特の雰囲気を持ってるせいで、変な気持ちになる。

だから、とにかくこの空気をどうにかしたかった。この甘ったるく謎に心地のいい空気をなくしたかった。

だって私が北斗先輩となんて、有り得ない。

｢わ、私がお付き合いしたいのは樹先輩なので………！｣

勢いに任せて、最初に注文したカルピスソーダで全部を喉の奥に流し込もうとした。北斗先輩の甘い顔も胸のドキドキも全部気の所為。それが正解だから。

ゴクリゴクリと氷の溶けたそれを嚥下する。

まだけっこう残っていた液体は生温くてすごく甘かった。薄まった炭酸がほんの少しの刺激を与えながら私の喉を通過していく。

｢だって私は………｣

樹先輩が好きなんです。空になったジョッキ下ろしてそう呟けば、眉を下げてちょっと困ったような笑みを浮かべた北斗先輩がそっかって言った。

なんで先輩がそんな顔するんですか。そう聞きたかった。けど、それは出来なかった。

だって急に、お腹の底がかぁっと熱くなって頭がクラクラしたから。

｢A？どした？｣

｢……なんか、頭がぽーっとする｣

さっきからぐるぐるしてた思考回路が余計絡まって戸惑う。え、何って思うのに身体から力が抜けちゃって、横にいる北斗先輩にもたれてしまう。

｢…もしかして酒飲んだ？｣

｢いや、そんなこと……｣

ないはずって言いたいのに、急激に重くなってしまった瞼に私は抗うことが出来なかった。

おい大丈夫かよってほっぺたに触れた北斗先輩の手のひらの冷たさだけが鮮明に感じられた。