ベイビー・ラブ (ページ29)

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｢ね？松村くん来たでしょ？｣

｢いやほんと私関係ないですよ…｣

飲み会当日、私の右隣に座るのは相も変わらず表情が乏しい北斗先輩。左隣の斎藤さんに耳打ちされて苦笑いする。

だってさっき私聞いたもん。なんで飲み会参加することにしたんですか？って聞いたら、なんとなくって北斗先輩言ってたし。

でも斎藤さんは特に気にしてる様子もないから、まあいいかって思った。南野ちゃん何飲む～って斎藤さんに、カルピスソーダお願いしますって言えば可愛い～って抱きしめられる。

｢ドリンクのセンスも本当に可愛い…！｣

｢さ、斎藤さん…？｣

｢ずっと女の子の後輩欲しかったのよ私～｣

え、何ってびっくりして北斗先輩の方を見たら、北斗先輩はふって笑っててそれにも驚いてしまった。

こんな人がたくさんいる所で北斗先輩が笑顔なの初めてな気がしたから。だってサークルの飲み会でだってそんな顔しないだもん。

｢松村くんは何飲む？｣

｢俺は…ウーロンハイで｣

｢渋いなぁ～｣

｢そうか？｣

何？この爽やかな北斗先輩。私見たことないよ。ていうか北斗先輩が樹先輩とか大我先輩以外の人とお話してるを見たことがない気がする。

もちろんバイト中はね、他のバイトさんともお話してるけどね。なんだろう、こーゆう私的な会話をしてる北斗先輩は初めてだ。

そう思ったらなんだか胸がきゅうってなった。だってそうだ。私、気づいちゃったよ。北斗先輩って………

｢本当に友達いないんですね……｣

北斗先輩のは？って声と、斎藤さんのえ？って声がハモった。そしたら、お前ねぇって北斗先輩に頭をガシッと掴まれる。

｢だって北斗先輩が樹先輩以外の人と話してるとこ初めて見た｣

｢それはAがいつも樹ばっか見てるからじゃん｣

｢え、そーゆうこと……？｣

｢そうだろ、バカ｣

じゃあ誰と友達なんですかって聞いたら、誰でもいいでしょって北斗先輩。やっぱり居ないんじゃんて心の中で思ったら、お前の考えてることなんて丸わかりだよってデコピンされた。

痛いって言えば痛くないでしょの押し問答。すっかりいつもの調子で北斗先輩と言い合ってたら、横からクスクスって笑い声。

｢これ！これが見たかったのよ～｣

｢………へ？｣

｢南野ちゃんと松村くんのイチャイチャが生で見たかったのよねぇ｣

って、何それその勘違い！

思わず言葉を失ってしまった。が、とにかく誤解を解かねばと思い張り上げた全然そんなんじゃないんですけど！って私の声は、飲み会の喧騒に掻き消されてしまった。