ベイビー・ラブ (ページ23)

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人当たり良いよねって言われることが多い。いつもニコニコしてるよねって、それはすごく嬉しい褒め言葉。

でも、苦手な人に対してもこの八方美人を発揮しちゃう自分が憎らしいと思う時もある。そう、今日みたいな日は本当に。

｢ねえAちゃん今日飲みに行こうよ｣

｢私、未成年なんで～…｣

｢じゃあご飯行こう｣

｢えと……ちょっと用事があるので…｣

本当に私って間が悪いと思う。今日はこの人がいるのわかってたはずなのに、レジ締めをしてお店を出たに忘れ物に気付いて事務所に戻ればこの有様。

｢じゃあいつならいける？｣

｢うーん…どうでしょう…？｣

ねえねえって迫られて鳥肌がたった。こんなに嫌なのになんで強く拒否れないんだろうって思うけど、これが自分の性分だから仕方ない。

とにかく今はどうやって打開するかだ。今日一緒に締めだった斎藤さんはきっともう帰っちゃってるし、誰かもう1人この空間に入ってきてくれないかな。

今日早上がりだった北斗先輩はどうだろう。ダメ元でお願いしたら、来てくれるかも。

｢何、行けない訳？｣

｢そ…ですね、2人はちょっと……｣

｢んであの松村っての呼ぶ訳だ｣

｢いや……？｣

北斗先輩の名前に一瞬ドキリとしたけど、背中の後ろで操作してるスマホにはまだ気付かれていない。北斗先輩今外出れます？ってLINEには数秒で既読が付いたから、これは勝ったと思ったら気が緩んだ。

つるりと滑った指先からスマホが落ちる。音を立てて落下したそれは、困ったことにあの人の足元へ。

｢何これ｣

｢……はい…？｣

｢俺と話しながら、あいつに連絡してたの？｣

｢や……それは…｣

これはどう考えても言い訳出来ない雰囲気だった。でもどうにか言い逃れようと頭をフル活用してたら、唐突に肩に強い衝撃が走る。

｢いっ……た…｣

｢……痛がる顔も可愛いね｣

｢……なっ…にするの…？｣

｢何って、わからせてやろうって｣

舐めたことしたら痛い目見るよって、ニタニタした粘っこい笑み。押し付けられた身体は動かない。

もう、ヤバいって事だけはわかってた。

｢やめて…ください……｣

｢んー？何で？｣

｢何でって、そんなの……｣

嫌だからに決まってるじゃないですか。って言いたいのに恐怖で喉がつかえた。怖くて悔しくて涙ぽたぽたと零れる。

｢さ、ナニから始めよっか｣

覆い被さる影に思わず目を瞑った。
その脳裏に映るのは好きな人の顔。

ファーストキスは、樹先輩とが良かったのに。