ベイビー・ラブ (ページ22)

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ep.8 無防備の代償ページ22

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｢何かお前……｣

｢はい？｣

｢顔キモイよ｣

全休の水曜日。同じく全休の北斗先輩と並んで超絶暇なお昼のレジ内作業中。

キモイって何ですか！っていつもなら大激怒だけど、今日は大変失礼な北斗先輩のことも許してあげる。だって私とっても機嫌が良いから。

｢キモイなんて言ったらモテませんよ｣

｢何その上から目線、ムカつく｣

｢ちょ、痛いです～｣

頭をガシッと掴まれて条件反射的に痛いって言えばパッと手を離す北斗先輩は優しいんだか優しくないんだか分かんない。

｢…樹と何かあったの？｣

｢ふふふ、聞いちゃいます？｣

｢いやいい｣

｢え、ちょっと聞いてくださいよ！｣

暇なのをいいことにレジの中でコソコソ話してても全然お客さんは来ないから、北斗先輩にこの間の樹先輩とのデートであったことを話す。

｢でね、これ買ってくれたんです｣

｢へえ｣

シャツから樹先輩が買ってくれたネックレスを見せても北斗先輩は無表情。やっぱり男の人にアクセの話をしても興味ないのかななんて思っていれば、唐突にAちゃんお疲れ様って声がかかった。

顔を上げると視界に入る長身。他店舗の社員さん。

｢Aちゃん居たからこっちヘルプ来ちゃったよ｣

｢あはは…、ありがとうございます…？｣

｢いいえ～｣

いいえって。私別に嬉しくないんだけど。

なんか、最近この顔を見ることが多い。自意識過剰って笑われるかもしれないけど、この人は私を見ている気がする。

正直気持ちが悪いって思う。でも社員さんだし何か私を気に入ってくれてるみたいだし邪険にできない。

だから、藁にもすがる気持ちで助けてって視線を北斗先輩に向ければ大きな手が頭にぽんと置かれた。

｢今日すげえ暇なんですよ｣

自然に私を背中に庇いながら北斗先輩が言う。その瞬間社員さんの目が驚くほど冷たくなって背中に冷汗をかく。

そう？って、そんなの見たらわかるのに白々しい。先輩はそんな社員さんの疑問符は無視して、レジ内は俺らで大丈夫なんで外のことお願いしますって。

｢じゃあ俺がAちゃんとレジ内残るよ｣

｢俺が教育係なんで｣

｢いや社員が言ってんだよ？｣

｢俺店長にAから目離すなって言われるんで｣

あんまりにも淡々と北斗先輩が言うから社員さんは黙りこんで逃げるようにレジから出て行った。

拭いきれない気持ち悪さの中北斗先輩のシャツの裾を握れば、大丈夫って言った先輩が私の髪をかき混ぜた。