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早く起きたはずなのにって、この数分で500回くらい思ってる。アラームより前に目が覚めたのにも関わらず準備が終わらない。
樹先輩から今から向かうってLINEが来たのに鞄の中身は決まってないし、どーしよって思っていればピンポーンって。
え、もう来ちゃったんですか…？！
｢樹先輩ですかー？｣
｢何？寝てたの？｣
｢違いますよ！｣
ただ準備終わんなくてってインターフォン越しに言葉を返せば、いったい何持ってくのって笑いながら樹先輩が言う。
｢何持ってけばいいかわかんなくてこんな時間です…｣
｢何もいらねえよ？｣
｢え、だって、｣
｢車出すし、スマホだけ持って出て来いよ｣
え、車ってどこ行くんだろう。全然予想がつかないけど、もう樹先輩に任せることにした。スマホだけはさすがにと思って小さめのバッグにお財布とメイクポーチだけ放り込んで家を出る。
｢お待たせしました…！｣
｢その格好｣
｢はい！北斗先輩コーデです！｣
｢そうだなあ…｣
気付いてくれて嬉しい！って思うけど、樹先輩は顎に手を当ててうーんてしてるからなんか不安になってきた。似合ってないですか？って聞けば、いや超似合ってるけどって先輩が言うから余計困惑する。
じゃあなんでそんな顔するんですか〜って樹先輩の顔をじとーって見れば、俺じゃなくて北斗なんだよな…て謎の呟き。
｢今日は俺のAだよな？｣
｢今日はっていうか、いつも樹先輩のAですよ！｣
｢そーゆうとこ可愛いけど、心配になんなぁ｣
急に可愛いとか言われて頭が真っ白になった。でもそんな私にお構いなしに、ふっと笑った樹先輩が昨日のように私の手を引く。
｢じゅ、り先輩…！｣
｢ん？｣
｢えと……やっぱり、なんでもないです……｣
そ？って余裕な顔して樹先輩はずるいよ。いつだってあっという間に私のことメロメロにさせちゃうんだもん。
ぎゅうって包まれた手のひらが熱い。はい乗ってって、車の前で手が離された時は、今日1日一緒にいれるはずなのにやっぱり名残惜しい。きっとそれが顔に出てて、私の顔を見た樹先輩が吹き出す。
｢大丈夫、すぐ繋いでやっから｣
｢え……大丈夫です…！｣
｢繋がねえの？｣
｢やだ…繋ぐ…｣
はい、いい子って車に乗り込んだ樹先輩に髪を撫でられたら、まるで猫にでもなったかのように気持ちがいい。
じゃあ行くぞって車を発進させた樹先輩があまり前のように運転席から片手を伸ばして私の右手を握るから、また頭が真っ白になったのは言うまでもないよね？
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作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2021年2月4日 17時
