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しつこい元カレから助けてくれたのはお隣さんだった。
兄妹のふりをしてほしい、なんて馬鹿げたお願いを聞いてくれた彼は今では愛しの恋人様だ。
｢A明日帰ってくんだよな？｣
｢そうだよ〜｣
｢何時？迎えいくわ｣
｢んー、まだ分かんない｣
キャリーケースを引きながら歩く見慣れた道。スマホの向こう側にも聞こえてるはずだけど、チャラく見えて意外と純真な彼は私の言葉をまるで疑っていない様子。
｢樹くんさ、今家に居るの？｣
｢そうだけど？なんで？｣
｢いや、何してるのかなぁって｣
｢ああ、今は料理してる｣
つい3ヶ月前までは料理のりの字もなかったのに、暇だからって始めた料理は既に彼の趣味になっているらしい。
会えない間、私たちはズームや電話で色んなことを話したね。エピソードだけだったそれが、どんどん現実味を帯びてくる。
｢何作ってるの？｣
｢男のカレーよ｣
｢え、食べたい｣
｢したら明日食おうな｣
｢やだ、今日食べる｣
｢んな無理なこと言うなよ｣
｢……無理じゃないよ？｣
ピタッと立ち止まったのは、懐かしいようなそうでもないようなアパートの一室の扉の前。
迷わず押したインターホンにちょっとの沈黙が落ちたら大好きな彼の声が聞こえた。大きく開け放たれた扉に引きずり込まれて笑みが零れる。
｢A……！｣
｢ただいま、……樹くん｣
抱き締められたら、もう堪らなかった。空港を降り立っても実感がなかったのに、今やっと帰ってきたんだって思った。
｢つかなんで居んの？明日って言ってたろ｣
｢早い飛行機取れたから｣
｢言えよ、マジで｣
｢だってびっくりさせたかったから｣
｢びっくりさせすぎだっつの｣
目尻によった笑いジワ。怒ってるつもりかもしれないけど、もう笑顔が溢れちゃってるよ。樹くん。
｢…なんか、焦げ臭い｣
｢やべ、カレーだ｣
｢早く戻んないと｣
｢そうだけど……まずは、｣
おかえり。そう囁いた樹くんがくれたのは触れるだけの可愛いキス。お鍋の中身を守るために駆け出した背中が愛おしい。
｢A、早く入ってこいよ｣
｢はーい、今行くね｣
妹じゃなくて、お隣さんじゃなくて、恋人として迎え入れられた彼の部屋は、少し焦げ臭くてとびきり懐かしい、優しい匂いがした。
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sail(プロフ) - ゆらさん» そのように言って頂けてとても嬉しいです。これからの更新もよろしくお願いします！ (2020年12月9日 1時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - この小説大好きです！更新楽しみにしてます！頑張ってください(^_^) (2020年12月8日 16時) (レス) id: 52075201ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2020年11月23日 20時
