◎ ページ44
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｢荷物こんだけ？｣
｢はい。後は送っちゃうんで｣
名残惜しい時間は刻一刻と過ぎていくもので、荷物をまとめて家を出た時にはお昼を回っていた。
｢これから送るってこと？｣
｢あ、もう送ったのもあるんですけど、残りは兄が来てやってくれるみたいで｣
｢本物のお兄ちゃんか｣
｢んふふ、そうです｣
"お兄ちゃん"という響きを聞くと少しだけおかしくなる。結局、樹くんのことを"お兄ちゃん"って呼んだのは最初のあの時だけだったね。
藁にもすがる思いでお願いした兄妹のふりだって、いつの間にか関係なくなって、私は樹くんに恋してた。
｢樹くんの運転初めて｣
｢こう見えても俺、安全運転だから｣
｢そうなんだ？｣
｢ん。だから、帰ってきたらいっぱいドライブしよう｣
樹くんの未来に私がいる。それだけで胸がきゅんと甘く鳴る。
私たちが一緒に過したのはたった1ヶ月だけだったけど、次はきっと違うよね。色んな所に行って色んなことをして、 2人でいっぱい思いで作ろうね。
単なるお隣さんを気になってくれてた樹くんと、単なるお隣さんに兄妹のふりをお願いしちゃう私なら、何でも乗り越えられる気がするんだ。
｢じゃあ……俺はもう帰るから｣
｢うん。…あの、着いたら連絡していいですか？｣
｢あったりめーだろ。つかして待ってるから｣
｢……うん｣
空港について少しだけお茶をしたらもう夕方で。そろそろ家族が来ると樹くんに伝えたら、本当にお別れだ。
｢俺さ、ドラマとかの別れの場面って大袈裟だって思ってたんだけど……｣
｢樹くん……？｣
｢マジで人目とか気にしてらんねーのな｣
｢……へ？……ぅ、わ！｣
行ってらっしゃいって小さな声と深い大人のキス。触れて、溶けて、離れて、また繋がって、苦しくなるまで私たちはキスをした。
｢……帰ってくんのいつ？｣
｢4月…かな｣
｢来年の？｣
｢ううん。今年だよ？｣
｢意外とはえーな。だったらいける｣
｢いけるって何が｣
｢樹くんの樹くんがAちゃんに会いたすぎて爆発したらやべーだろ？｣
｢……ばか！｣
最後の最後まで甘くてチャラくてちょっとだけえっちな樹くんは、特大の笑顔で私のことを送り出す。
この腕の中に戻ってこれる、その日を信じて。
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sail(プロフ) - ゆらさん» そのように言って頂けてとても嬉しいです。これからの更新もよろしくお願いします！ (2020年12月9日 1時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - この小説大好きです！更新楽しみにしてます！頑張ってください(^_^) (2020年12月8日 16時) (レス) id: 52075201ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2020年11月23日 20時
