day.6 最後の嘘 ページ40
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年が明けたら時間が過ぎるのはあっという間だった。私は樹くんに言えない秘密を抱えたまま、明日、日本を旅立つ。
｢いよいよか……｣
｢…うん｣
｢実感ないわ｣
｢寂しくて泣かないでくださいよ？｣
｢それはAちゃんでしょー｣
必要な物はほとんど梱包してしまったからと言う理由で今日は樹くんの家にお邪魔していた。
初めてここに来た時と同じように2人がけのソファに収まると、すぐ横に樹くんの体温を感じる。慣れてしまったこの温かさも今日が最後だ。
｢その……色々お世話になりました｣
｢何よ改まって｣
｢だって樹くんが居なかったら頑張れなかったから…｣
始まりはあの元カレだったかもしれない。でも、私はそのこと以上に樹くんに救われたんだよ。
お礼のつもりで申し出たご飯を作るって言うのも、いつの間にか私のためにもなってた。
家族と離れてる上にこれからは1人でもっと頑張らないといけないっていう重圧に押し潰されそうだったんだ。そんな私の隣にいてくれて私がどんなに元気付られたか、きっと樹くんは知らないんだろうね。
私は、卑怯な口実で樹くんのこと独り占めしてたんだ。
｢もー、泣くなよ｣
｢だって……っ｣
｢そんな泣かれたらさぁ…俺と離れたくねーのかなって思っちまうよ？｣
｢………｣
｢その無言、肯定だと取っていい？｣
私の涙を拭った樹くんは最後までそんなことを言った。その声は砂糖を何個も溶かしたように甘くて、否定なんてできるわけがなかった。
樹くんの真意は分からないけど、今は樹くんに身を委ねてみたかった。
｢Aちゃん、目閉じて｣
｢……うん｣
今日だけでもいい。だなんて、自分に嘘をついて樹くんの言いつけ通り目を瞑る。
心臓がありえないほど高鳴って、ふと気が付けば柔らかい感触がおでこに落ちた。
｢……無防備過ぎだよ、ばか｣
｢……え｣
｢ここにする前に、俺の話……聞いてくれる？｣
緊張した唇に触れる樹くんの指は震えている。
涙でぼやけた視界には、偽りの兄でなく、1人の男として真っ直ぐに私を見つめる樹くんが映った。
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sail(プロフ) - ゆらさん» そのように言って頂けてとても嬉しいです。これからの更新もよろしくお願いします！ (2020年12月9日 1時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - この小説大好きです！更新楽しみにしてます！頑張ってください(^_^) (2020年12月8日 16時) (レス) id: 52075201ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2020年11月23日 20時
