◎ ページ32
.
ピザを頼んでビールとチューハイの缶のプルタブをあけたら宴の始まり。さっそくDVDをセットして、出てきた画面に驚愕した。
｢怖いの…忘れようって言いましたよね？｣
｢うん｣
｢じゃあ…何でホラー｣
｢怖いのは怖いので上書きがセオリーかなって｣
ほら、隣おいでって笑う樹くんは、やっぱりこの状況を楽しんでいるような気がする。お兄ちゃんのようで何かが違くて、見た目通りチャラくて何かが違う。
樹くんって変な人。
｢ホラー苦手？｣
｢ちょっと…｣
｢怖かったら抱き着いていーよ｣
｢…しない｣
揶揄うように笑う樹くんに促されるまま座った小さめのソファは座り心地が凄く良かった。このソファに何人の女の子が座ったのかな…なんて無意識に考えてて頭を振る。
私は樹くんのことなんて何も思ってない……って、言い聞かせてる自分に焦った。そんなこと考えてる時点で、自分の気持ちがお隣さんに傾いているのは明確だったから。
｢Aちゃん？どした？｣
｢何も、ないです｣
｢もう始まるよ｣
｢…うん｣
雰囲気出そうぜって、樹くんが消した部屋の明かりに掬われる。私の顔、きっと今凄く赤い。
これから始まるホラー映画にドキドキしてるのか、肩に触れる体温にドキドキしてるのか、もう分からなかった。
これが所謂吊り橋効果ってやつ……？
｢俺これ見るの2回目なんだけど｣
｢え？じゃあなんで、｣
｢これ、めっちゃ怖いから｣
Aちゃんが怖がる顔見たくてって、悪戯っ子のように言った樹くんの裸足の足が私の足に触れた。末端冷え性の私の足先に温い体温が移る。
｢足、超つめてーじゃん｣
｢それは…緊張してるから……｣
｢映画に？｣
｢…映画に｣
｢ふーん？｣
樹くんは何を私に言わせたかったのか。分からないまま世にも恐ろしいオープニングが始まった。
やっぱり煩い心臓を抱えながら、テレビの光で浮き出た樹くんの顔を私はこっそり見つめていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2106人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sail(プロフ) - ゆらさん» そのように言って頂けてとても嬉しいです。これからの更新もよろしくお願いします！ (2020年12月9日 1時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - この小説大好きです！更新楽しみにしてます！頑張ってください(^_^) (2020年12月8日 16時) (レス) id: 52075201ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2020年11月23日 20時
