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｢洗うの、私やりますって｣
｢作ってくれたじゃん｣
｢材料買ってきてくれたの樹くんだし…｣
｢なら一緒にやろーぜ｣
私が今まで付き合ってきた人は、こんな風に台所に立ってくれたことはなかった。だからかな、一人暮らし用のこの台所が少し狭く感じる。
｢俺泡係ね｣
｢泡係って何ですか｣
｢スポンジで泡付ける役。んで、Aちゃんは流す役｣
お皿洗いは随分慣れているような樹くんはテキパキとお皿を泡立てていく。彼女の家とかでやってるのかな……て、なんで私ちょっと残念に思ったの。
｢樹くんは……彼女とか？居ないんですか？｣
｢居たら女の子の家に上がんないわ｣
｢……意外とチャラくないんだ｣
｢それはチャラい以前の問題っしょ？｣
俺は女の子には一途なタイプだよー。そう言う樹くんのことを私はちょっと誤解していたみたいだ。優しいだけじゃなくて恋愛に真面目なのね。って、だからなんで樹くんの恋愛関係が気になるの私！
｢そう言うAちゃんは今まで彼氏は？｣
｢えと…まずあの人と、あと2人居たかな｣
｢高校含めてる？｣
｢いや、大学だけですけど…｣
しまったと思った。大学2年のこの時期に元彼3人は……言わなきゃ良かった。絶対遊んでるやつだと思われる。そう、身構えた私に対して樹くんは何でもなさそうに｢モテんだな｣とだけ言った。
なんだ意外と気にしてない。そりゃ樹くんだってモテるかって油断した私を知ってか知らずか、スポンジを水で流した樹くんは私の方にずいっと身を乗り出す。
待って、めちゃくちゃ近いんだけど…？！
｢そーいやAちゃん｣
｢はい……？｣
｢近くで見るとすげー綺麗な顔してるよね｣
ニッと白い歯を出して笑う樹くんと私の距離はおよそ5cm。ほんの少しでも身じろきしたら、キスしちゃいそうなそんな距離。
｢じゅ、りくんだってイケメンじゃん……｣
｢それはよく言われる｣
｢うわ、本当なんだろうけど何かやだ｣
｢マジにすんなよ、冗談だって｣
吹き出した樹くんは私のことを揶揄っている。分かりきっているのに早鐘を打つ心臓が恨めしかった。この音は何かに似てる。出来れば気付きたくない。あの感情に。
｢泡付いてる｣
｢……へ｣
｢ほら、ここ｣
優しく掬われた髪の毛に警戒アラートか大音量で鳴り響く。もう、恋はしない。………きっと、しないはず。
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sail(プロフ) - ゆらさん» そのように言って頂けてとても嬉しいです。これからの更新もよろしくお願いします！ (2020年12月9日 1時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - この小説大好きです！更新楽しみにしてます！頑張ってください(^_^) (2020年12月8日 16時) (レス) id: 52075201ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2020年11月23日 20時
